伊藤忠商事のように一部の会社でうまくいっている取組があるものの、「管理職に引き上げたくても断る女性が多い」「女性活躍が進まないのは女性側にも問題がある」というステレオタイプの発言を聞く機会も多く、ある意味聞き飽きました。
少子化・子育て・家事負担が諸外国に比べて圧倒的に女性が負担している状況の中で女性活躍を述べることはかなり無理があります。女性活躍のためには、男性も含めた働き方改革が必須です。
私はよくセミナーで組織風土や企業文化とは「誰がその組織でえらくなってきたか(評価されてきたか)の歴史」というお話しをします。組織風土や企業文化を変えたいと思っている経営陣は、自分たちが評価されない(=上に立っていてはいけない)組織にすることだという自己矛盾をしていることに気づくということです。
そう考えると、我が国は、ついこの前までは家庭や子育てを専業主婦である奥様にお任せし、一つの会社を務めあげる事が評価される文化だったわけですから、そのような風土や文化を変えるのは至難の業です。また、子育て中は家庭内の問題で、子育て中は(特に女性は)色々なことを犠牲にすることが美徳だと評価されている風潮も変えていく必要もあります。
まずは、自分の周りから、多少の非難や衝突があっても、声高に主張していかないといけない危機的な状況なのかもしれません。
「育児休暇を取らずに仕事だけをしていたなんて、要領悪いよね」
「一つの会社だけでしか勤まらなかったなんて恥ずかしいよね」
「育児休暇取らないなんて、成長のチャンスを逃すよね」
「学校行事にも参加できないような仕事の仕方をしているなんてチームビルディングが下手だよね」
いかがでしょうか。なかなか難しそうですよね。
現状は、令和2年度に厚労省が実施した「職場ハラスメントに関する実態調査」によれば、「過去5年間に勤務先で育児休業等に関するハラスメント又は不利益取り扱いを受けことがあるか」という質問に対して、男性社員の26.2%が受けたことがあるという回答で、その内容としては、「上司から制度の利用を阻害する言動」「昇進・昇格の人事考課における不利益な評価」「上司による解雇その他不利益な取り扱いの示唆」など上司からのハラスメントが上位を占めたとのことです。
結局は上司=えらい人の価値観がしばらくは優先されてしまうのでしょうか。
ただ、このような状況を打破するため、2023年4月から、大企業を対象に「男性の育児休業取得状況」の年1回の公表が義務化されます。恐らくランキングがされて公表されるでしょう。そうすると少し潮目も変わってくるかもしれません。
情けないお話しですが、しばらくは「開示」に後押しされた少子化・女性活躍施策が続くのかもしれません。
文:辻さちえ(公認会計士・公認不正検査士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.168 2023.3.15)より転載