「テレワークと生産性」について考える

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※画像はイメージです

ビズサプリの辻です。今日はコロナで急激に変わった働き方について考えていきたいと思います。

1.リモート勤務の実態

当初インフラも整わないまま半ば強制的になだれ込んだ在宅によるリモートワークもずいぶん定着してきたように思います。当初は自宅の通信状況や操作の不慣れもあり大混乱だったZoomやTeams等の会議システムを使った打ち合わせにも慣れてきた方も多いのではないのでしょうか。

私はオンライン配信でのセミナーに慣れてきて、パソコンに向かって一人笑顔で話すことも苦にならなくなってきました。在宅勤務によって通勤や出張の時間がかからなくなり、一つの会議から次の会議への移動もボタン一つでできることから、むしろ「リモートの方がよい」と感じることも多いのではないでしょうか。

実際にどれぐらいの方がリモート中心の働き方に変化したのでしょうか。日本生産性本部が2020年5月から定期的にコロナ禍における働き方の調査を実施しています。これによると、テレワークの実施率は2020年5月が31.5%と一番高く、その後の調査では調査時の感染状況により多少変動はあるものの、20%前後となっています。

政府からは「テレワーク率7割/5割」といった発言もあり、クライアントでも「出勤率5割」とか「出勤は週に1.2回」というお話を聞くのでもう少し高いと思っていましたが全国的にみると2割程度のようです。ただ、従業員が10,000人を超える企業においては、テレワーク率が45%となっている調査もあり大企業ほどテレワークが進んでいて、「テレワーク格差」があるという状況のようです。

半ば強制的に始まったテレワークは快適なものだったのでしょうか。これについて様々な機関がアンケート調査を実施していますが、概ね7割~8割の人が「テレワークになってよかった」と回答しています。コロナ禍という非常事態で当初は混乱があったものの、慣れてみれば好意的に受け止められているようです。

ちなみに甲南大学では、2020年度新入社員を対象に調査を実施しており、テレワークについて、87%が「働き易い」、83%が「満足している」と回答しているとのことでした。オフィスや現場等の職場での勤務をほとんど経験しておらず、また人間関係がまだ築けていない新入社員からもより高い満足度が得られているようです。「新入社員に教育の機会がなくてかわいそうだ」という声もあったかと思いますが、若い方達は、現状を柔軟に捉えて新しい環境にしなやかに対応しているのかもしれません。

2.テレワークと生産性

またテレワークにおける「生産性」については興味深い調査結果がありました。

出社時と比較した時のテレワーク時の生産性について 出社時より生産性が高まった(100%超)とした回答は16.6%にとどまり、逆に生産性が落ちた(100%未満)とした会社が64.7%と大半になりました。つまり出社するより生産性が落ちたと回答した会社の方が圧倒的に多いということになります。もともとコロナ前から労働生産性が低いことが課題となっていた日本企業にとってはさらに生産性が落ちるのは由々しき事態です。

一方で同じ質問をアメリカ企業に実施したところ、100%超とした会社が41.2%であり、100%未満とした会社が15.3%ということでした。ずいぶん回答傾向に違いがみられます。

これについて当該調査の分析によれば、テレワーク時の生産性を高める要因と逆に生産性を低くする要因として以下のように整理しており、コロナの関係なく、元々あった日本企業の特徴がそのままテレワークの生産性に影響を与えているように思えます。(パーソル総合研究所 第4回新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査)

(生産性を高める要因)

〇組織風土
 ・結果重視の風土
 ・働き方のフレキシビリティ

〇上司マネジメント
 ・遠隔会議のファシリテートスキル
 ・変化受容マインド

〇個人の働き方
 ・スケジュール管理スキル
 ・問題対処スキル

(生産性を低める要因)

〇組織風土
 ・権威主義的な風土
 ・紙・書類への依存

〇上司マネジメント
 ・育成重視マインド

〇個人の働き方
 ・集団主義マインド
 ・遠隔コミュニケーションの苦手意識

3.時間と場所の働き方改革

在宅勤務で生産性が落ちてしまっているのであれば、コロナが終焉すれば「元に戻る」という選択肢を取ることになるかと思いますが、そう簡単にはいかないように思います。冒頭にあったように、従業員の7割~8割が在宅勤務に満足をしており、この働き方を続けたいと思っています。

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