ビズサプリの辻です。
先日、2022年に出生した子どもの数が80万人を割り込んだというニュースが大きく報じられました。当初の想定で出生数が80万人を割り込むのは2030年と予測しており、少子化が想定を上回るペースで進んでいます。少子化については、何十年も前から指摘され、少子化対策が過去から様々実施されていますが、結果を見る限りこれまでの対策は有効ではなかった(失敗だった)と言わざるを得ないでしょう。
この点、岸田政権は「異次元の少子化対策」として、これまでの予算を倍増させた政策を発表していますが、内容としては
・児童手当など経済的支援の強化
・学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充
・働き方改革の推進
の3つとなるそうで、この他にも非正規雇用の子育て世代に対しての給付制度の創設等が考えられているそうです。
この施策で少子化の動きを反転させるかどうかは数年後に結果として出てくることになります。
ただ、私は残念ながら期待薄と思っています。少子化の問題は、ジェンダーギャップ、景気、社会など様々な分野の課題と関連します。少子化の流れになるこの状況を反転させるには、非難も相当出るような思い切った施策(それを「異次元」というのだと思ったのですが)が必要ですが、今回の施策をみても、「びっくり」して賛否両論が盛り上がったことはなかったように思います。
政策を考える側の頭が硬直化していて、急激な変化や危機感を感じることができていないのではないかと思うのですが、これは日本企業の失われた30年でよく言われるフレーズと同じようにも思えます。
今日は、少子化の一要因ともなる女性活躍について前回取り上げてからの変化と最近の動向について述べたいと思います。
以前、私がこのビズサプリ通信でジェンダー問題を取り上げたのは2018年9月でした。ここでは、東京医科歯科大学の女性受験者に対する得点操作の不祥事から、女性活躍の難しさについて述べたものでした。そこから4年半経ってさすがに点数の調整はなくなっていると思いますが、我が国のジェンダーギャップの立ち位置はどのようになっているでしょうか。
ちょうどジェンダーに関する調査結果が3月に立て続けに2件発表されました。
まず、3月2日に世界銀行が世界の国と地域の経済的な男女格差に関する報告書を発表し、日本はOECD(経済協力開発機構)の加盟国で最下位ということでした。
この報告書では、「育児」や「賃金」など8分野で、女性の経済参加に関する法律の制定状況などが、100点満点で評価されているものです。日本の得点は78.8点で、OECDに加盟する38カ国中で最下位、特に「賃金」や「職業選択」の面での評価が低いとのことでした。
3月8日は、国連が定めた「国際女性デー」で、イギリスの経済誌「エコノミスト」が主に先進国29か国を対象に女性の働きやすさを評価したランキングを発表し、日本は最下位から2番目でした。なお最下位はお隣の韓国です。この調査は男女間の賃金格差や育児休暇、子どもの教育にかかる費用、管理職や議会の女性比率など10の指標に基づいて各国を評価するものとなっていて、前述の世界銀行の調査とほぼ同様の結果となっています。つまりは、ジェンダーギャップについても先進国の中では最下位争いから抜け出せていないとのことです。
なお、先進国だけでなく比較的多くの国を対象としている世界経済フォーラムが毎年公表しているジェンダーギャップ係数調べでは、2022年の日本の順位は146か国中116位(前回は156か国中120位)でした。前回と比べて、スコア、順位ともに、ほぼ横ばいで、先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となりました。
このようにどの調査をとっても最下位レベルは変わらず、女性活躍についても遅々として進んでいないように思えます。どの調査においても女性の政治参画と経済的な不平等(賃金格差)が順位を大きく引き下げる要因となっていること、女性の教育については高スコアであることもここ数年変わっていない状況です。
このような状況から考えると、女性議員が少ないことで女性活躍のための政策(一部は少子化対策ともなる)のピントがずれていて、そのために十分に教育を受けた優秀な女性が活躍できる環境が整わず、結果的に経済的な格差が生まれているというサイクルではないかという仮説が成り立ちそうです。暗い気持ちになりますね。
なお、日本の中だけで見ると、女性管理職比率、男性の育児休暇比率などは間違いなく伸びていますので、何も変わっていないわけではないのです。周りがもっと変化をしているので世界の中の相対的な立ち位置は変わっていないと言えます。
「頑張っていないのではないけれど、周りがもっと頑張っている」状況といえます。女性活躍だけに限らず、「失われた30年」といわれる様々な状況と非常に似ているように思います。