【会計コラム】令和3年度税制改正|電子帳簿等保存制度

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3.システムインフラとモニタリングがより重要となる

電子帳簿保存の導入企業としては、電子保存が容易になることで、電子データを活用して二重入力を減らせること等により経理業務の生産性の向上が図れますし、電子データはシステム内に格納され物理的な原本確認が必要ないため、従来難しかった経理業務のリモートワークの推進が可能となります。

ただメリットだけでなく、従来の紙ベースから電子データとなることで、複製の容易な電子データは二重請求や二重計上のミスを招きやすくなるため、受領してから申請~支払までの仕組み、特にシステムインフラをきちんと整備する必要があります。その上で、電子帳簿保存の仕組みを踏まえた業務フローが適切に行われているのかをモニタリングして、従業員の不正やミスを監視する必要があります。

システムインフラの観点から、せっかく電子データとして保存出来ても、電子データ保存用のシステムと、社内決裁ツールとしての電子稟議(ワークフロー)、会計システム等が連動していないと、せっかくの電子データが効率的活用できていないことになり、生産性向上やテレワーク推進として生かせないことになります。

この点については、一気通貫のシステムとして構築するか、あるいはそれぞれのシステム同士が連動はしなくても、データの吐き出し・取り込みが容易に行える仕組みとする等、電子帳簿保存の導入に際して、業務フローとシステムの見直しを実施しなければなりません。

4.経理業務はより付加価値の高い業務へ

今回解説した令和3年度の税制大綱のうち、電子帳簿保存法の改正は税金計算そのものに影響するものではないですが、経理業務のデジタル化を進める意味でのインパクトは大きなものがあります。

紙の原本保存が必須であることから、物理的に会社での業務を強いられ、書類の整理や保管に労力を割かなければならなかった従来の状況から解放され、リモートワークが可能となり、取引データを電子化することで、その後の仕訳入力作業を自動化、あるいは半自動化することで、仕訳入力に費やす時間の削減に繋がります。

これは経理業務という職種がなくなることを意味するものではなく、仕訳入力というどちらかというと単純作業はコンピュータに任せ、人の行うべき仕事としては、入力された仕訳のチェックや、前期比較や予実分析と言った管理会計業務にシフトしていくべきと考えます。

また、分析業務を強化するため、システム上どういう勘定科目や補助科目を設定すべきか、システム変更を行う場合にどのようなシステム設計にするのか、あるいはシステムを選択するのか、現状の業務フローをより効率的、効果的なものとするためにはどのように変更していけばいいのか等、より付加価値の出せる仕事の割合が増えていくはずです。その第一歩として、紙の帳簿書類から電子帳簿に移行することは、チャレンジすべきいい機会だと思います。

また、紙ベースで申請書を回し、ハンコをつくことで決裁していたプロセスから、電子化された証憑を添付する形の電子稟議で決裁を行うプロセスに変化することで、改ざんや二重精算のリスクは相対的に紙保存よりも高くなる可能性があります。

紙の原票だとコピーや改ざんは容易ではないですが、電子データはコピーや改ざんが比較的容易という特色があり、スキャナ保存時のタイムスタンプは保存日時は保証しても取引発生日を保証するものではないためです。

そこで、計上された経費を事後的にモニタリングする仕組みが重要となります。具体的には、増減比較分析や予実分析と言った管理会計的な観点でのモニタリングを、従来よりも詳細レベル(例えば、申請者別や取引先別等)で行うことが有効と考えます。

文:花房 幸範(株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.130 2021.3.10)より

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