四国地方が日本で唯一の「新幹線空白地」になった理由

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「3本の本四架橋」で後回しになった新幹線整備

建設の可能性がある香川県、徳島県、愛媛県と3県の経済界が地元有力国会議員を巻き込んで、妥協なき激しい誘致合戦を繰り広げた。その結果、政治決着で各県1本ずつ連絡橋を建設することに。3本合わせて約3兆4000億円の巨大公共投資が連絡橋に回り、四国の新幹線整備は後回しにするしかなかった。

さらに3ルートがバラバラに建設されたため橋の完成は遅れ、最も早かった児島・坂出ルートでも開通はバブル景気真っ只中の1988年4月。神戸・鳴門ルートは1998年4月、最も遅かった尾道・今治ルートは1999年5月と、全通時にはすでに深刻な景気後退期に入っていた。

関西圏と直結する道路新幹線併用橋として計画された明石海峡大橋は、景気悪化に伴う建設コスト削減で道路単独橋に変更(1985年6月に先行開通した同ルートの大鳴門橋には新幹線用スペースがある)。そのため連絡橋全通後の新幹線計画は紆余曲折していく。

四国4県は1987年6月に策定された「第四次全国総合開発計画」で、四国新幹線を「第2国土軸」の基幹交通網と位置づけていた。それが大阪市(新大阪駅)を起点に、徳島市、高松市、松山市など瀬戸内海沿いの都市を結び、四国最西端の佐田岬半島を経由して豊予海峡(約16km)を橋かトンネルで渡り、大分市(大分駅)へ至る「四国横断新幹線」計画だ。

ところが明石海峡大橋に新幹線を通すことが不可能になり、関西側でも新たな鉄道専用の橋かトンネルの新設が必要となった。その結果、想定される総事業費は約4兆円にまで膨らんだ。費用便益比は0.31と大幅に低下し、仮に開通しても建設費負担がJR四国や沿線自治体に重くのしかかることになる。

そこで「現実的な新幹線誘致策」として浮上したのが、フリーゲージトレイン(軌間可変電車=FGT)だ。国内の新幹線にはフル規格のほかに、低コストで建設が可能な「ミニ新幹線」と「スーパー特急」がある。

JR四国・予讃線鴨川駅に停車するFGT試験車両。四国新幹線の最有力候補だったが…。(Photo By Spaceaero2)

「ミニ新幹線」は在来線のレール幅を、フル規格の新幹線と同じ1435mmに拡幅した路線。レール幅は同じなので、同一車両によるフル規格新幹線路線への相互乗り入れが可能だ。「ミニ新幹線」は、すでに秋田・山形新幹線の約276kmが開通している。

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