廃業で姿消す「サクマ式ドロップス」が復活するかもしれない理由

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源流は同じ、共同商標で「サクマ式」の存続も可能

この両社の源流は同じ会社だ。1908年(明治41年)に佐久間惣次郎商店が「サクマ式ドロップス」を発売し、1913年(大正2年)には缶入り商品を投入した。ドロップにクエン酸を加えたことで夏の高温下でも溶けにくく、透明感がある見た目で人気を集めたという。1920年に佐久間製菓に社名変更し、1938年には取引先から招いた山田弘隆氏が社長に就任した。

戦前の「サクマ式ドロップス」缶
戦前の「サクマ式ドロップス」缶(同社ホームページより)

しかし、太平洋戦争の戦況悪化に伴う物資不足で砂糖供給が滞ると、企業整備令により最初の廃業に追い込まれる。戦後に営業を再開するのだが、この時に山田社長の三男である隆重氏が1947年にサクマ製菓を、前身会社の番頭役だった横倉信之助氏が1948年に佐久間製菓を、それぞれ立ち上げた。

両社は「サクマ式ドロップス」の商標を巡って訴訟で争い、この商標権は佐久間製菓が取得した。サクマ製菓は新たに「サクマドロップス」の商標を使用することになった。訴訟後に両社が歩み寄り、現在では「サクマ式ドロップス」の商標権は両社が共同で持っている

佐久間製菓の廃業により、共同商標を持つサクマ製菓が赤缶の「サクマ式ドロップス」を復活する可能性がある。終戦直後の「お家騒動」に見えた会社分裂も、今となっては1社が廃業しても残る1社で祖業を存続する「危機管理」効果があったと言えそうだ。

文:M&A Online編集部

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