また一つ、日本の老舗企業が姿を消す。赤色の缶入りドロップ「サクマ式ドロップス」を製造・販売する佐久間製菓(東京都豊島区)が2023年1月20日に廃業するとことが明らかになった。110年近い歴史を持つサクマ式ドロップスが消えるのは残念だが、実は復活する可能性もある。
缶ドロップには、緑缶の「サクマドロップス」もある。ややこしいが、これを製造・販売しているサクマ製菓(同目黒区)は別会社で、今回の廃業とは何ら関係がない。商品名も社名もそっくりの両社、どんな関係があるのか?
佐久間製菓はコロナ禍による売上不振や、このところの原材料、エネルギー価格の高騰、従業員確保といった複合的な要因で経営が行き詰まった。サクマ式ドロップは昔ながらの赤缶で「レトロ感」の商品デザインがセールスポイントだった。
一方、サクマ製菓のサクマドロップスは基本デザインは変わらないものの、アニメの「鬼滅の刃」デザイン缶を16種類発売したほか、サンリオの「ハローキティ」などコラボ商品を相次いで投入している。過去には「いちごみるく」や「チャオ」などの新製品がヒットした。「静」のサクマ式ドロップスに対して、「動」のサクマドロップスといえる。
この両社の源流は同じ会社だ。1908年(明治41年)に佐久間惣次郎商店が「サクマ式ドロップス」を発売し、1913年(大正2年)には缶入り商品を投入した。ドロップにクエン酸を加えたことで夏の高温下でも溶けにくく、透明感がある見た目で人気を集めたという。1920年に佐久間製菓に社名変更し、1938年には取引先から招いた山田弘隆氏が社長に就任した。
しかし、太平洋戦争の戦況悪化に伴う物資不足で砂糖供給が滞ると、企業整備令により最初の廃業に追い込まれる。戦後に営業を再開するのだが、この時に山田社長の三男である隆重氏が1947年にサクマ製菓を、前身会社の番頭役だった横倉信之助氏が1948年に佐久間製菓を、それぞれ立ち上げた。
両社は「サクマ式ドロップス」の商標を巡って訴訟で争い、この商標権は佐久間製菓が取得した。サクマ製菓は新たに「サクマドロップス」の商標を使用することになった。訴訟後に両社が歩み寄り、現在では「サクマ式ドロップス」の商標権は両社が共同で持っている。
佐久間製菓の廃業により、共同商標を持つサクマ製菓が赤缶の「サクマ式ドロップス」を復活する可能性がある。終戦直後の「お家騒動」に見えた会社分裂も、今となっては1社が廃業しても残る1社で祖業を存続する「危機管理」効果があったと言えそうだ。
文:M&A Online編集部
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