深刻化する企業の後継者問題。今から始めたい事業承継対策

国内企業の経営者の高齢化が進み、後継者問題がいっそう深刻になっている。手立てを講じないまま大黒柱が病に倒れ、社員も家族も途方に暮れる――といった例もあるのが現状だ。経営者は後継者問題にどのように向き合っていけば良いのか、専門家に聞いた。

オーナー企業の約5割が、後継者問題に直面している!

 オーナー企業の経営者層の高齢化に歯止めがかからない。民間調査会社の調べによると、経営者の平均年齢は、1990年以降上昇傾向にあり、2012年には前年より0.2歳上昇して、平均58.7歳となっている。別の調査では、オーナー企業の68.8%が後継者不在で、65歳以上のオーナー社長では48.7%が後継者問題を抱えているとの結果も出ている。経営者が引退したいと考えるのは平均64.5歳といわれるが、引退を考えながらも70歳代、80歳代になっても重責を担い続ける経営者が多いのが現状だ。

 しかし、オーナー経営の場合、良くも悪くも経営者の経営判断に依存しがちな構造になりやすいため、経営者が高齢化して、以前のような積極的な経営ができなくなると、企業の活力が低下し、結果として企業価値を損ない、やむを得ず廃業せざるを得ない、というケースも少なくない。

 知能(intelligence)の研究においても、新しいことへの挑戦や問題解決能力は、60歳以降に急速に低下するといわれている。下図は、オーナー企業のうち「増収増益」となった企業群を抽出し、その企業群をオーナー経営者の年代別に分けたものであるが、社長の年齢が70歳代を超えると、増収増益の割合が減少している。この調査結果は、人は60歳以降になると問題解決能力が低下するという説を裏付けていると言える。

出典:帝国データバンク「第2回全国オーナー企業分析」2013年1月

経営者の急病。業績が悪化しトラブルに……

 専門家は、「一番怖いのは、後継者問題の解決を先延ばしにしているうちにオーナー経営者の体調が急に悪化して、対策を講じられなくなってしまうケースは多い」と話す。

 親族や従業員に多大な負担をかけて業績が悪化し、さらには経営が立ちゆかなくなる事態も引き起こしかねないという。「経営者が急逝してしまい、親族間、あるいは親族と従業員の間で争いが生じるケースも見られます。親族が株式を相続し、経営は従業員が担うことにしたが、数年後に親族が株式を譲渡しようとしたところ経営陣の反対に遭い、売却できないまま塩漬けになってしまったという例も多発しています」。

後継者問題解決案にもなる「事業承継型M&A」

 とはいえ、多くのオーナー企業にとって、会社を継ぐ意思と能力を兼ね備えた後継者を見つけるのは困難である。そんなとき問題解決案がM&A、つまり会社を譲渡・売却するという方法があるということは覚えておきたい。

 よい買い手が見つかれば、企業の存続・発展が望め、オーナーは創業者利潤を得ることができる。また、こうした事業承継型のM&Aでは、従業員の雇用条件も維持されることが多く、家族も相続税の支払いに困らない。

 オーナー経営者は、責任感が強すぎて経営の中心から離れられない場合が多い。自分の信用がないと経営が成り立たないと考える人も多い。しかし、いつか引退の時は必ず訪れる。「心身ともに健康なうちに、家族や従業員のため、そして自身のためにも、しっかりとした事業承継計画を立てておくことが重要」と専門家は話す。

文:M&A Online編集部