そうなれば東京五輪は会期中に「打ち切り」となる可能性が極めて高そうだ。近代オリンピックの夏季大会は1940年の東京大会を含めて過去3回中止しているが、開会後に打ち切られた大会はない。東京大会はこれまで3回決まったが、成功したのは1964年の1回だけで、1回は中止、1回は前代未聞の打ち切りという悲惨な結果に終わる懸念が出てきた。
もしも選手村でクラスターが発生すれば、一般市民も無事では済まないだろう。コロナ陽性者は「選手村で療養」というわけにはいかない。陽性者は選手村を出て、指定されたホテルなどで療養することになる。さらに若年層でも重症化するデルタ株だけに、発症して入院する選手や関係者も出るだろう。
東京は現在コロナ感染の第5波に見舞われており、過去最大の感染者を出した2020年12月から2021年1月にかけての第3波を超える勢いで新規感染者数が増大している。感染拡大が止まらなければ、ホテルなどの療養施設やコロナ患者を受け入れる病床が逼迫(ひっぱく)するのは必至だ。
そこに選手村から大量の陽性者や発症者が流れ込んでくるとなると、医療崩壊を起こしかねない。入院先が見つからず自宅などで死亡する事例も、5月末までに全国で500人を超えた。難しいのは誰を受け入れるのかの選別だ。
日本人を優先して選手を受け入れなければ、民族・人種差別だと国際世論から批判されるだろう。国の代表である五輪選手がそのような扱いを受ければ、送り出した国で日本の印象は極めて悪くなる。選手村で待機中に死亡者が発生すれば「事故物件」となり、五輪・パラリンピック終了後の分譲引き渡しでのトラブルも起こりかねない。
反対に選手を優先して日本人を受け入れなければ、ただでさえ五輪開催に否定的だった国内世論から「外国人のスポーツエリートを優先するのか」と猛反発を受けることになるだろう。「開会時にはコロナ感染も下火になっている」と期待していた政府にとっては、最悪のタイミングで迎える五輪となるのは間違いない。
文:M&A Online編集部
日本政府は2021年4月13日に、東京電力福島第一原子力発電所で増え続けている放射性物質のトリチウムを含む汚染水を海洋に放出する方針を決めた。トリチウムとはどのくらい危険な物資なのだろうか。