ルノーは今回の事件を「ゴーン氏個人による犯罪」と主張するだろう。つまりは「組織としてのルノーに責任はなく、これまで通り最大株主としての権利を行使するのは当然」ということになる。
西川廣人日産社長も記者会見で「ゴーン氏個人による犯罪」と強調し、日産は被害者であるとの主張をした。それだけに正面切ってルノーの責任は問えない。
今回の「追放」劇は、犯罪行為よりも、ルノーとの経営統合に前のめりになったゴーン氏に日産経営陣が危機感を抱いたのが原因との指摘もある。
ゴーン氏がルノーCEO続投の条件として日産との経営統合を受け入れたのは事実だ。が、自らの経営者としての業績を傷つけたくないゴーン氏だけに、日産の吸収合併はルノーCEO任期ぎりぎりの2022年頃とみられていた。
しかし、ゴーン氏逮捕でルノーによる日産との経営統合は、さらに早まる可能性が高い。なぜならばゴーン氏という強力なカリスマ不在の状況下では、時間が経てば経つほど経営統合の行方が不透明になるからだ。
フランス政府は経営統合が「既定路線」となっている今のうちに実現しようとするだろう。日産に時間を与えれば、それだけ「脱ルノー」に向けた準備体制が整うことになる。
日産社内がスキャンダルで大揺れの現在こそ、日産を「吸収合併」する千載一遇のチャンスなのだ。「ルノー・日産の強固な経営統合によって、トップ逮捕という両社の未曽有の危機を共に乗り切る」という「大義名分」もある。
早ければ年内にも、ルノーが経営統合に向けた何らかの動きを見せるだろう。外国企業の意思決定は驚くほど早い。日産が「脱ルノー」の本懐を遂げるつもりならば、残された時間は極めて短いと覚悟しておくべきだ。
文:M&A Online編集部
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