リーマンショック後に製作 リストラを描く『カンパニー・メン』

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リーマンショック後に製作、豪華キャストが彩る『カンパニー・メン』

2008年9月のリーマンショックに端を発した不景気では多くの企業が経営不振に陥り、大量解雇が行われた。2010年公開の映画『カンパニー・メン』は当時の世相を反映して、突然会社からクビを宣告されたエリートビジネスマンたちの心の葛藤と再生を描いたヒューマンドラマである。

主人公のボビーにベン・アフレック、造船の現場から重役に上り詰めたフィルにクリス・クーパー、リストラされたボビーに救いの手を差し伸べる義兄ジャックにケヴィン・コスナー、そして大量解雇を断行した社長と対立する副社長ジーンにトミー・リー・ジョーンズと米アカデミー賞俳優4人をキャスティング。家族の生活を背負う男の悲哀をそれぞれの立場で滲ませた。

監督は「ER 緊急救命室」「ザ・ホワイトハウス」などをプロデューサーとして手掛けたジョン・ウェルズ。本作で長編映画の監督デビューを果たし、脚本も担当している。

あらすじ紹介

ボストンに本社を構える総合企業GTX社で販売部長を務めるボビー(ベン・アフレック)は、37歳にして年収12万ドルを稼ぐエリート。しかし、リーマン・ショックを機に会社は赤字の造船部門の廃止を決め、大規模なリストラを断行する。解雇リストには、ボビーも含まれていた。

すぐに再就職できると考えていたボビーだが現実は想像以上に厳しく、愛車のポルシェやローンがまだ残る邸宅を手放すことになった。八方塞がりのボビーは反目していた義兄ジャック(ケヴィン・コスナー)が営む工務店で大工として働き始め、自身の生き方を見つめ直していく。

好対照な妻の向き合い方が明暗を分ける

突然、会社から解雇を言い渡され、私物を入れた段ボールを抱えて途方に暮れる主人公たち。妻と子供を養わなければいけないボビーとフィルは再就職を目指すが、希望の職にはたどり着けず、いらだちを隠せない。副社長だったジーンは経済的には困窮していないが、仕事を失ったことで人生のやりがいを見失ってしまう。コロナ禍の今、彼らの姿は日本のサラリーマンに重なるところだ。

夫の失業という家族の一大危機にあたり、妻の向き合い方が好対照だ。すぐに気持ちを切り替えたボビーの妻は仕事を再開し、ゴルフの会員権を手放そうとしない夫を叱り飛ばし、支出抑制を提案する。一方、フィルの妻は現実を受け入れられず、世間体を気にするあまり夫を追い詰めてしまう。妻の振る舞いの違いが、夫の人生の明暗を分けた。

見栄っ張りの主人公が失業という危機を家族の支えで乗り越え、働くことの意味と矜持を取り戻していく。予期せぬ苦難の前に立ちすくんでいる人々にエールを送る作品である。

文:堀木 三紀(映画ライター)

<作品データ>

カンパニー・メン

監督・脚本:ジョン・ウェルズ
出演:ベン・アフレック、クリス・クーパー、ケヴィン・コスナー、マリア・ベロ、ローズマリー・デウィッド、トミー・リー・ジョーンズ
原題:The Company Men
2010年/アメリカ/105分

堀木 三紀 (ほりき・みき)

映画ライター/日本映画ペンクラブ会員

映画の楽しみ方はひとそれぞれ。ハートフルな作品で疲れた心を癒したい人がいれば、勧善懲悪モノでスカッと爽やかな気持ちになりたい人もいる。その人にあった作品を届けたい。日々、試写室に通い、ジャンルを問わず2~3本鑑賞している。(2015年は417本、2016年は429本、2017年は504本、2018年は542本の映画作品を鑑賞)


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