経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、2時間程度なので手っ取り早い。実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。エンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。
マクドナルドを世界最大のハンバーガーチェーンにしたレイ・クロックの半生とともに、マクドナルドの誕生秘話を描く。ちなみに、内容も内容だけに、本作はマクドナルド非公認とのこと。2017年7月29日公開。
舞台は1950年代のアメリカ。52歳のレイ・クロック(マイケル・キートン)は、一度に5つのミルクセーキが作れるマルチミキサーを売るセールスマン。ある日、一つの店から8台ものオーダーが入り、どんな店なのか興味本位で見に向かう。それが、ディック&マック兄弟が経営するハンバーガー店「マクドナルド」だった。効率的な動きの流れ作業 “スピード・サービス・システム”、徹底的にコストを削減しつつも高品質を保つというコンセプトを目の当たりにしたレイは、「マクドナルド」にビジネスチャンスを見出す。兄弟と契約を交わし、フランチャイズ展開を進めていくが、利益を追求するレイと品質を第一に考える兄弟との関係は急速に悪化していってしまう。
手づくりにこだわりながらも、効率的なハンバーガーづくりのシステムを生み出し、ハンバーガーショップ「マクドナルド」を人気店にしたディック&マック兄弟。普通に考えれば彼らが創業者だが、世界的ハンバーガーチェーン「マクドナルド」の創業者という意味ではレイ・クロックになる。“創業者”はその定義によって変わり、タイトルにはそのあたりの皮肉が込められているのだろう。アイデアとしてはディック&マック兄弟、ビジネスとしてはレイ・クロック。半ば強引な形ではあるが、最終的には「マクドナルド」という名前を含め、レイが兄弟から270万ドルで商権を買い取る形で決着がつく。兄弟のアイデアを既に知っているのだから、レイはアイデアだけを使って別の店を立ち上げることもできたはずだ。それでもレイが「マクドナルド」という名前にこだわる姿には、少し歪んだ形ではあるが、マクドナルドに対する愛情を感じずにはいられない。
フランチャイズで苦い経験をした兄弟を説得してフランチャイズ契約を取り付けたものの、レイの前には資金繰りや兄弟との確執など数々の困難が立ちはだかる。それでも諦めずに、「ハンバーガー帝国をつくる」という夢を胸に邁進し続けられたのは、根気があったから。折りたたみテーブルやマルチミキサーなどのセールスマンとしての経験が活きているのだろう。
その根気を維持するかのように、レイが自己啓発レコードを聴いて自らを奮い立たせるシーンは印象的だ。ちなみにこの自己啓発レコードは、トランプ米大統領が唯一師と仰ぐノーマン・ピール氏の著書「積極的考え方の力」を収めたもの。目的のためには手段を選ばないあたり、レイとトランプ大統領は似ているといえる。
レイのやり方には賛否両論あると思うが、それでもレイの粘り強い根気がなかったら、良くも悪くも私たちの食文化はだいぶ変わっていたに違いない。見終わった後、改めてマクドナルドの存在について考えさせられるはずだ。
文:M&A Online編集部
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