ハリウッドも待ったなし! ネット配信と劇場の同時公開へ

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止められないネット配信の余波

ハイブリッド公開はやむを得ない選択と考えていたワーナーでしたが、その流れで来年の17本の新作についてもハイブリッド公開を決断しました。ちなみにこの決断の前には、幾つかの作品についてNETFLIXと交渉したという報道もありました。

現在ハリウッドメジャーと呼ばれているのは、ディズニー、ワーナー、ユニバーサル、ソニー・ピクチャーズ、パラマウント、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)の6社です。そして、このうち半数の3社が配信サービスを使うという選択をしたのです。

また、懐事情の厳しいMGMが看板タイトルの007の新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のライセンスを動画配信サービス会社に売り渡そうとしていたという報道もありました。提示された金額が高額だったこともあって商談成立には至らなかったようですが、映画館の通常営業が見通せないことから、他のメジャー各社も何かしらの対策を講じざるを得ない状況になっています。

ネット配信が主流になりつつある中で、劇場での映画の上映というスタイルを重視する人たちにとっては非常に残念な選択として受け止めているようです。

ハリウッドに失望する業界関係者も

前述のノーラン監督や『ワンダーウーマン1984』のパディ・ジェンキンス監督、『DUNE/砂の惑星』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督などはこのハイブリッド公開に失望の念を隠そうとしていません。ノーラン監督は「失望している、混乱している」と公式にコメントし、全米監督協会や劇場主からは「立ち上げたばかりのHBO Maxが会員数を増やしたいがための選択ではないのか?」とワーナーに疑問を投げかける動きが出ています。

何かしらの形で映画を公開し収益を確保したい会社と、劇場での上映の確保を求める監督や映画ファンとが衝突する図式ができつつあります。

他方で、おうち時間の拡大によって動画配信サービスは顧客を増やし続けているという側面もあります。劇場上映が再開されるのか、ハイブリッド公開が定着するのか、ということも含めて、新型コロナウイルスの感染症拡大の余波は映画界にも大きな影響を及ぼしています。

文:村松 健太郎(映画文筆家)

村松 健太郎 (むらまつ・けんたろう)

映画文筆家

2002年から映画館勤務で業界入り。2016年頃から映画文筆家として活動を開始。脳梗塞を患ったために杖片手に試写室や映画会社を行ったり来たりしています。映画祭の審査員やインディーズ映画の宣伝などもしていますが、興行出身ということもあって、少しでも多くの人の足が劇場に向かってほしいと願う日々です。年間300本の新作とそれ以上の過去関連作を見て回っています。 

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