クーパン株を売却した理由は、同社の業績。2021年12月期の営業損益は物流拠点の整備など先行投資がかさみ、15億ドル(約2170億円)と過去最大の赤字額を計上している。現在のクーパンに楽天市場を追い落とす余裕はない。
ビジョン・ファンドの持ち株比率も35.6%から28.9%へ下がり、3分の1を切っている。影響力も限定的だ。クーパンが自社の判断ではなく、ソフトバンクグループの言いなりになって楽天市場の市場を奪いにかかることはないだろう。
そもそもクーパンは、すでに日本に「上陸済み」だ。同社は2021年4月に日本法人のクーパンジャパン(東京都目黒区)を設立。東京都内で約4000種類もの食品や日用品などを、最短10分で配達するネットスーパーを展開している。
三木谷氏の楽天グループが携帯事業の巨額赤字で苦しんでいるのに乗じて、孫氏がクーパンを利用して楽天市場を潰しにかかる。一部週刊誌報道によると、この噂の発信源の一つはライブドア元社長の堀江貴文氏が運営するオンラインサロンでの発言という。
国内ITの変革者として著名な孫氏と三木谷氏の「全面対決」となれば話は盛り上がる。社運を賭けた携帯事業の赤字に乗じて楽天市場のシェアを奪いにかかるのも、十分にありうる話だ。
が、もし孫氏が国内EC市場で首位を狙うとしたら、投資先のクーパンで「代理戦争」を展開するというまどろっこしい手は打たないだろう。数々の巨額M&Aをものにしてきら孫氏だけに、TOB(株式公開買い付け)で楽天グループ本体を獲りにかかる可能性が高い。
文:M&A Online編集部
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