LVMHアルノー会長、日本との連携強化で政府へ3つの提案

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Bernard Arnault, Photo by REUTERS

松野官房長官と会談 ファッション・アート業界支援へ

経済産業省は5月10日、パリを本拠地とする高級ブランド世界最大手、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのベルナール・アルノー会長兼CEOが松野博一官房長官と2日に会談したと発表した。アルノー氏は日本のファッション・アート業界との連携強化を打ち出し、LVMH傘下の製品に日本の素材が使われている場合、具体的な産地名を記載するなど3つの連携策を提案した。

©REUTERS

高級ブランドに採用 岡山デニムや今治タオル、京都西陣織など産地表記

LVMH傘下のルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオールといったブランドは、岡山のデニムや今治のタオル、京都の西陣織などを採用している。ファッション業界の慣習では生地の産地まで公開されないことが多いが、日本の地名が表記されればブランド力の強化を期待できる。

官邸で行われた会談では、岸田政権下の「新しい資本主義」が重視する「人的資本投資」を通じた伝統技術・工芸や個の創造性の発現であるアートが、これからの価値創造の源泉であることを確認。新型コロナウイルスの影響で需要減に喘ぐ日本のファッション・アート業界を支援するため、アルノー氏は3つの連携策を提案した。

3つの連携策

1.LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンにおいて、日本の素材などが使用されている場合には、商品説明欄に具体的な産地名を記載するなど、日本の産地が有する高い技術力の海外発信により一層協力すること。
2.同時に、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンにおいて、高品質な素材などを提供する日本企業との連携を一層発展させて、日本の企業、特に中小企業各社や職人の成功に貢献すること。
3.さらに、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンにおいて、日本の若手アーティストや工芸家とのコラボレーションをより一層推進すること。

経産省も海外需要の獲得などを支援

アルノー氏による連携策の提案は、経済産業省が2021年11月に有識者を集めて発足した「これからのファッションを考える研究会」の論議を踏まえたもの。研究会にはLVMHジャパンのノルベール・ルレ社長が委員として参加し、海外ブランドによる日本産の表記とブランド化などを政策課題として提言した。

経産省も連携策を生かした海外需要の獲得などを目指す考えで、日本の素材のブランド化やファッション・アート産業の中小企業、職人、若手アーティストとLVMHの具体的な連携を支援する方針。経産省の産業構造審議会繊維産業小委員会も近く、2030年に向けた繊維産業のビジョンを示す報告書を取りまとめる予定だ。

日本の生地のポテンシャルは高い

研究会が2022年4月に公表した「ファッションの未来に関する報告書」によると、日本の生地の輸出額は約2279億円で、アパレル輸出額全体に占める割合は諸外国を大きく上回る約30%に達している。米国のアパレル輸出額は日本の約7566億円の3倍を超える約2兆5057億円だが、生地の輸出額は約1928億円にとどまる。

一方、国内繊維産業の製造品出荷額は8兆円台を記録した1990年代以前から大幅に減少し、近年は約1兆9000億円と横ばいが続く。高い技能・技術を有するモノづくりを国内外の新たな市場に結び付けるため、取引機会を創出する取り組みが求められている。

コロナ禍でも好調な世界の高級品消費

LVMHは1987年、ルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシーの両社が合併して誕生したコングロマリットで、欧州を中心に75のメゾン(会社)を傘下に収める。2021年の売上高は、コロナ禍前を大きく上回る約8兆2195億円。2022年1~3月期も前年同期比29%増の約2兆8400億円と好調で、高品質の日本の生地・素材が参入する余地は大きいと言えそうだ。

長者番付世界第3位のアルノ―氏

なお、1代で世界最大の高級ブランド企業体を築き上げたアルノー氏は、米経済誌「フォーブス」が4月に発表した「世界長者番付2022」でイーロン・マスク氏(米テスラCEO)、ジェフ・ベゾス氏(米アマゾン会長)に次ぐ3位(総資産額約20兆円)と推定されている。

関連リンク:
日本のファッション・アート産業との連携強化を目的に、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンのベルナール・アルノー会長兼CEOが松野官房長官を表敬し、意見交換を行いました。 (METI/経済産業省)
ファッションの未来に関する報告書について(METI/経済産業省)

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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