「縮小型事業承継」とは(上)製造業のケース

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写真はイメージです

現在の日本に会社は何社ぐらいあるかご存知でしょうか。2018年発表の「経済センサス- 活動調査(確報)」では386万社となっています。

それでは、そのうち後継者がいない企業はどのくらいあるのでしょうか。帝国データバンクの動向調査では26万6000社に調査を行い、実に16万社が後継者不在だったそうです。日本の会社の60%が後継者が不在となっているのです。

386万社に当てはめると、220万が消えてしまう計算になります。少子化や景気の不透明感等様々な理由はあると思いますが、これは大変な問題です。国も後継者不在解消の切り札としてM&Aを積極的に推進しています。

では、M&Aですべての会社を救うことが出来るでしょうか。M&Aの件数は年間3~4千件程度です。解決には程遠い数字ですね、後継者不在でM&Aで相手が見つからない会社はどうなってしまうのでしょうか。社長の体力の限界と同時に廃業するしかありません。

中には優秀な技術やノウハウを持っている会社もあると思います。それにもかかわらず廃業してしまうことはもったいない事ではないでしょうか。通常のM&Aは会社の全て(100%)を譲渡します。廃業は事業が全くなくなって(0%)しまいます。

青山財産ネットワークスの「縮小型事業承継」は将来に残すべき価値がある部分があれば、その部分の承継を目指していくものです。100と0の間に40や50というM&Aと廃業の間に選択肢があっても良いのではないかと考えているのです。これから3回にわたり「縮小型事業承継」の事例を紹介していきます。

社長の早期引退、事業承継を実現

A社は、カー用品のメーカーです。特許も複数保有し、新商品が業界紙に取り上げられることもありました。小さいながらもカー用品のアフターマーケットでは存在価値のある会社でした。業歴は50年を優に超え、現在のB社長は4代目で在任期間も20年近くになっていました。

社長も70才を超え引退を考えていましたが、子供が無く、社内にも適任者がいませんでした。M&Aの話もありましたが、海外の低価格商品との価格競争に巻き込まれ、業績がここ数年低迷していること、東京近郊に倉庫兼工場を所有していることから、収益に比べてM&A価格が割高になるため、M&Aは上手くいきませんでした。

私たちのファンドには、メイン銀行のM&Aの部署から相談がありました。B社長としては、体力の限界もあり早期に引退したいとのことでした。M&Aが終盤で頓挫した影響もあったかもしれません。

ここ数年、業績は低迷していましたが、技術力や一定の地域での販売力が強いこと、東京近郊に大きな倉庫兼工場を所有していることから事業の引受先はあるのではないかと考え、投資を行いました。

投資後、社長の交代を行いました。その時点でB社長には、老後の人生を楽しむくらいの退職金と株式の売却代金が入りました。新社長をファンドより派遣する事もありますが、A社については、会社の内容を熟知している総務担当役員の方に内部昇格で社長になってもらいました。

その後、地方の遊休土地の売却、営業所の統合、高齢役員の退任等、事業のスリム化を行いました。しがらみが少ないファンドだからできた部分もあると思います。

事業の改善と並行して、M&Aの活動も行いました。時間はかかりましたが、同業者が興味を示しました。営業地盤が重複していない事や東京近郊に拠点を設けることができるという点がポイントだったようです。ファンドという機能を活用する事で社長も早期に引退でき、事業も一番良い形で引き継ぐことができました。

文:青山財産ネットワークス

青山財産ネットワークス

「財産の承継・運用・管理を通じてお客様の幸せに貢献する」ことを経営目的とする、総合財産コンサルティングファーム。2021年に創業30周年を迎えた。近年、高まっている財産承継・事業承継・財産運用のコンサルティングニーズに対応し、日本一の総合財産コンサルティングファームを目指している。


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