「縮小型事業承継」とは(下)新聞配達業のケース

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写真はイメージです

関東近郊の新聞配達事業者(5年超営業赤字、金融資産等多数、資産超過)の全株式を縮小型事業承継ファンドが買い取り、同社の資産は、縮小型事業承継ファンドが換価し、事業は、従業員も含め近隣の同業他社に事業譲渡しました。(現在も事業・雇用継続)

スマートフォンの普及から、情報獲得手段の多様化が進み、紙媒体の新聞市場は急速に縮小しています。一般社団法人 日本新聞協会のHPによると、2000年時点では、日本の世帯数約4700万世帯に対し、新聞の発行部数が 約5300万部 と1世帯に対する販売部数が1.13部を超えていましたが、2020年時点では、日本の世帯数 約5700万世帯に対し、新聞の発行部数が 約3500万部 と1世帯に対する販売部数が0.61部まで減少しています。

新聞配達業は①新聞を購入する顧客との契約獲得、②新聞社から新聞を仕入れ、顧客への配達を業としています。配達エリアには各社ごとの棲み分けがあり、他社エリアの顧客に対し、新規契約の営業を行うことは出来ません。

また、近年、配達業者の事業多角化は増えているものの、以前は、新聞社との契約で配達業者の事業を多角化することが禁止されていることも多く、配達業者としての経営の自由度は低い状況でした。

事業と資産を切り分けて承継

対象会社のオーナーは、上記の外部環境の変化を踏まえ、経営努力を長年続けていましたが、経営の自由度が限られていることに加え、地域の情報インフラとしての責任、多くの従業員を雇用している責任から、抜本的な施策を打つことができず、赤字が継続していました。

また、経営者自身の年齢、親族内での後継者不在という状況もあり、自社の将来について非常に悩んでいました。

近年は、中小企業のM&Aが活発であるため、後継者不在の場合、第3者に事業を承継するのが一般的になっています。しかし、対象会社は赤字かつ過去の利益の累積により、多くの資産を保有していたことから、事業が将来生み出す利益 (事業価値)と株価 (事業価値+非事業資産価値―負債)が釣り合わず、第3社の承継先を探索することが困難な状況となっていました。

こうした状況を受け「縮小型事業承継ファンド」では、事業と資産を切り分けて承継するという手法を選択しました。ファンドでは資産を、同業他社では事業と従業員を承継することで、事業を承継する第3者にとっては事業価値に見合った株価で事業を承継し、事業と雇用を新しいオーナーの下で継続することができました。

青山財産ネットワークスが関与した「縮小型事業承継ファンド」の案件3件を紹介しました。コロナ禍の影響もあり、産業構造の転換期の今、経営方針に悩む経営者の一助となれば幸いです。

文:青山財産ネットワークス

青山財産ネットワークス

「財産の承継・運用・管理を通じてお客様の幸せに貢献する」ことを経営目的とする、総合財産コンサルティングファーム。2021年に創業30周年を迎えた。近年、高まっている財産承継・事業承継・財産運用のコンサルティングニーズに対応し、日本一の総合財産コンサルティングファームを目指している。


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