SPAC設立者が注意すべきこと:発起人株式を標的とするSEC

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SPAC設立者が注意すべきこと:発起人株式を標的とするSEC

米国証券取引委員会(SEC)は、証券法違反について、特別買収目的会社(SPAC)、そのCEO及びスポンサーのみならず、合併買収先企業に対しても訴追を行っており、その結果、多額の民事制裁金が課され、SPACのスポンサーの「発起人株式」が没収されています。

JULY 2021 アラート

2021年7月13日、SECは、合併先の事業に関する虚偽記載による連邦証券法違反の疑いで、SPAC、そのCEO及びスポンサー、さらにはSPACの合併先企業、その設立者及び前CEOに対する訴追を行いました。

SECによれば、「アーリーステージの宇宙輸送会社」である合併先企業及びその設立者は、(i)同社の宇宙区間での一度きりの試験が目標を達成できなかったのに、同社の推進技術が宇宙空間での「試験に成功」したこと及び (ii)設立者に関する安全保障上の懸念により政府の許認可を得ることが困難になる可能性の程度について、虚偽記載を行ったとされています。

さらにSECは、SPACとそのCEOが合併提案に関する届出において誤解を生じさせる記載を繰り返し、証券法及び証券取引所法に違反したとともに、合併先企業に対する十分なデュー・ディリジェンスを行わなかった旨を主張しています。この点について、SECのジェンスラー委員長は、合併先企業が交渉の中でSPACに対し虚偽を述べた可能性を認めながら、これによりSPACが株主を保護するための十分なデュー・ディリジェンスを行わなかった責任を免れるものではないとしています。合併先企業の設立者に対する手続は連邦裁判所において進行中ですが、他の被告については和解が成立しています(SECの訴追事実に対する認否はなされていません)。

注目されるのは、和解の一環として、合併先企業は700万ドル、SPACは100万ドルの民事制裁金を支払うとともに、SPACのスポンサーが合併により取得するはずであった250,000株の「発起人株式」の没収に合意した点です。「発起人株式」はSPACのスポンサーが設立の際に取得し、買収が実行された際には莫大な利益を生むこととなるため、その没収は本件における重要な展開ということができます(今後の和解におけるSECの要求の兆候とも言えます)。加えて、本件における訴追は、今年前半になされたSPACの開示に対する審査の厳格化に関するSECの声明及び2021年6月にSECによる規則制定の対象リストへSPACを含めたことを受けたものです。この内容に関しては、過去のアラート“SEC Threatens to Slap SPACs”(英語版)をご参照ください。

本コメンタリーは、米国においてSPACを通じた出資やSPACによる上場を行うことを検討している日本企業に関心のあるトピックと考えられることから紹介する次第です。詳細は、Jones Day Alerts “SPAC Founders, Beware: SEC Targets Founders Shares”(オリジナル英語版)をご参照ください。

弁護士 森 雄一郎
弁護士 吉田 勇輝
弁護士 中島 渉

ジョーンズ・デイ法律事務所 アラート「SPAC設立者が注意すべきこと:発起人株式を標的とするSEC」より転載

ここに記載されている見解および意見は執筆担当者の個人的見解であり、法律事務所の見解や意見を必ずしも反映するものではありません。

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