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価格競争を軽量容器でクリア!大塚HDのクリスタルガイザー買収戦略

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水商品の展開のむずかしさ

 ミネラルウォーターの国内生産・輸入の総数量を見ると、1990年は17万5,348キロリットルだったが、2016年は352万2,928キロリットル。約20倍に膨れ上がった巨大マーケットである(日本ミネラルウォーター協会)。成長の一途をたどるそのマーケットのなかで、ミネラルウォーターは味による差別化のむずかしさを克服し、スーパーなどで特売の対象になりやすいことからくる価格競争の波を乗り越えていくことが求められた。

 今日、ミネラルウォーターの銘柄数は国産で800銘柄と推定され、輸入品を含めると1,000銘柄が流通しているといわれる。そのほか、水を電解処理したアルカリイオン水、海洋深層水を利用した飲料も流通している(日本ミネラルウォーター協会)。そのなかでしのぎを削っていかなければならない。

 大塚ベバレジ、大塚食品では、その差別化をまず容器開発に求めたようだ。それも、かつて1980年代初期のビールの“容器戦争”のようなものではなく、環境とリサイクルに配慮した容器の開発である。大塚食品のウェブページにある「クリスタルガイザー、環境への配慮」を参考に、その対応を見てみよう。

大塚ホールディングスHP「環境への配慮」より

『クリスタルガイザー』では、ペットボトルは重さ12.5グラムの軽量ボトルを使用。この対応により、容器の原料であるペット樹脂の使用量やリサイクル量を節減できるとしている。また、ラベルも従来の2枚の紙ラベルからリサイクルしやすい1枚のPPラベルに変更している。

 さらに、キャップにもこだわった。日本で流通する平均的なキャップの重さは3グラムだが、『クリスタルガイザー』のキャップはその3分の1の1グラムである。

 配送・輸送面での環境への取り組みでは、通常の木製パレットではなく、独自に開発したプラスチックパレットを採用し、リサイクルするしくみを構築している。また、輸入時の海上輸送では1か所に集中させず、人口密集地に近い12か所の港に分散して直送することで、日本国内での陸上運送を抑えたシステムをとっている。

 これら製造や輸送に関する施策をトータルして、CO2の排出量の削減、環境負荷の軽減につながるとしている。

 『水』商品は、味の面での差別化はむずかしい。

ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン(農林水産省)によると、

1.特定の水源から採水された地下水を原水とし、沈殿、濾過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わないものは、「ナチュラルウォーター」
2.ナチュラルウォーターのうち鉱化された地下水(地表から浸透し、地下を移動中又は地下に滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水(天然の二酸化炭素が溶解し、発泡性を有する地下水を含む)を原水としたものは「ナチュラルミネラルウォーター」
3.ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、品質を安定させる目的等のためにミネラルの調整、曝気、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合等が行われているものは、「ミネラルウォーター」
4.ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーターおよびミネラルウォーター以外のものは、「飲用水」または「ボトルドウォーター」

と厳密に規定されており、思い切った冒険がしづらい商品である。

 そのため、各社とも、ミネラルウォーターを活かしたメニュー提案、災害時の備蓄用商品の提案なども積極的に進めている。ミネラルウォーター各社、さらに容器メーカーなど周辺産業もこぞって、いわば目立つことのない工夫に邁進しているのが実情だ。

 文:M&A Online編集部

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