米国でも3月と4月に、がんの診断数が激減したことが指摘されている。米医師会(AMA)が8月に公開した医学誌「JAMAネットワーク・オープン(JAMA Network Open)」で、新型コロナの感染拡大前後で肺がんや乳がん、大腸癌など6種類のがんと診断された患者数の週平均を比較した論文を掲載した。
それによると3月1日から4月18日までの新規がん診断数の週平均は2310件で、2019年1月~2020年2月の週平均4310件と比較してマイナス46.6%の大幅減になった。
これは検診件数ではなく、検査の結果がんと判明した件数だが、事情は日本と同じだ。両月は米国の主要都市で新型コロナ感染の拡大を抑制するため、ロックダウン(都市封鎖)が実施されていた。コロナ感染者への対応を最優先し、緊急を要さない検査を制限したり、ロックダウンで通院を控えた結果とみられている。
がんの発生率は実際には下がっていないと考えられ、がんと診断された患者が大幅に減ったのは「見逃した患者が増えている」ことを意味する。英国ではかかりつけの医師からがん専門医への紹介件数が約75%減り、オランダでも1週間のがん発生症例数が約40%減少しているという。世界中でがんの見落とし増が懸念される。
がんの診断が遅れた場合の影響は深刻だ。肺がんの場合、日本人ではステージⅠの初期段階であれば5年生存率は91.6%だが、ステージⅡへ移行すると60.2%に下がる。がん患者自身や家族にとっても大問題だが、がん医療費の増加など健康保険財政に及ぼす影響も深刻だ。「感染がこわい」と尻込みするのではなく、むしろ「空いている今が好機」と考えて、がん検診の門を叩くべきだろう。
文:M&A Online編集部