元メガバンク行員が語る、銀行にM&Aの相談をするデメリットとは②

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今回は、前回に続いて銀行にM&Aの相談をするデメリットについて紹介する。まずは、銀行にM&Aの相談をするデメリットについて再度確認しておこう。

・M&Aの相手は銀行の取引先から選ばれる
・個人取引について圧力をかけられる可能性がある
・M&Aの経験が少ない法人営業部が担当する可能性がある
・担当者の力に左右される
・紹介会社の手数料が高い場合がある
・利益相反の問題がある

今回は、「担当者の力に左右される」「紹介会社の手数料が高い場合がある」「利益相反の問題がある」について説明したい。

担当者の力に左右される

銀行でM&Aの相談や実行をする場合、担当する法人営業部の力によっても左右されるが、担当者の力も非常に大きい。

優秀な担当者であれば、様々なネットワークを使って、より最適なマッチング相手を見つけてくれる可能性があるが、出来の悪い担当者だと、なかなかそのようなことはしてくれない。

また、優秀な担当者は、所属している法人営業部の部長との関係が良いケースも多いため、よりスムーズにM&Aの実行をすることができるだろう。

しかし、所属している法人営業部の部長との関係が悪いと、融資が下りないなど、様々なトラブルに巻き込まれる可能性があるので注意が必要だ。

紹介会社の手数料が高い場合がある

銀行でM&Aの相談をする場合、相談料は取られないのが一般的だ。しかし、いざ実行するとなると、銀行の関連会社を紹介される可能性がある。その場合、紹介会社の手数料が高くなるケースがあるので注意が必要だ。

メガバンクの場合、証券会社など様々な金融機関をグループで保有しているため、スムーズにM&Aの実行を行えるだろう。しかし、その分、手数料が割高になってしまう可能性は十分に考えられる。

M&Aで動く手数料は大きな金額になるケースが多いので、手数料についてはしっかり確認する必要があるだろう。

利益相反の問題がある

銀行は、当然ではあるが、M&A以外の仕事もしている。場合によっては、M&Aの買い手企業に融資をしているケースもあるだろう。このような場合、銀行にM&Aの相談をすると、M&Aの売り手企業は不利な条件を提示される可能性がある。

どういうことかというと、M&Aの買い手企業が銀行の取引先の場合、M&Aの実行を行うにあたって、融資をするケースは当然考えられる。

銀行から見ると、貸し倒れのリスクを少なくしたいため、融資金額を絞りたいケースもあるだろう。このような場合、売り手企業から見ると、売り値を低くされる可能性があるのだ。

当然、M&Aの売り手企業のほとんどは、1円でも高く会社を売りたいと考えている。

しかし、買い手企業が、取引先銀行の融資企業の場合、売り手企業から見ると不利な条件になってしまうので、M&Aが実際に実行される前に、買い手企業のメインバンクなどについてもしっかり確認しておくべきだろう。

M&Aの売り手の場合、銀行に相談するのは控えた方が良いかも

M&Aの売り手の場合、先ほど説明した通り、利益相反の可能性があるため、銀行に相談または、M&Aの実行を依頼するのはやめた方が良いかもしれない。

もちろん、多様な取引先を持っているため、様々な選択肢があるのは、大きなメリットになるが、最も重要な売値が低くなってしまう可能性があるのは見過ごせないデメリットになるだろう。もし、相談するにしても、買い手企業の経営状況やメインバンクについてはしっかり調べておくべきだ。

買い手企業の融資の大部分を、相談している銀行が受け入れている場合は特に注意が必要だろう。逆にM&Aの買い手の場合は、銀行に相談するメリットは大きいかもしれない。売却価格を安くしてくれる可能性があるからだ。

M&Aの買い手と売り手によって銀行に相談するのが良いのか避けるべきなのかは変わってくるのでひ参考にしてほしい。

まとめ

前回から2回にわたり、M&Aの相談を銀行にするデメリットについて説明した。銀行にはさまざまな情報があり、M&Aの相談をするメリットは大いにあるが、当然ながらデメリットもある。

今回紹介した6つ以外にもデメリットはあるが、主要なデメリットについては説明したつもりだ。特に、M&Aの売り手側から見ると売値が低くなってしまうという致命的なデメリットになってしまう可能性があるので、銀行に相談する際は十分に注意するべきだろう。

文:渡辺 智(メガバンクに11年勤務。法人営業・個人営業に従事)

M&A Online編集部

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