一神教と疫病とコーポレートファイナンスⅨ│間違いだらけのコーポレートガバナンス(22)

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スペイン・バルセロナのコロンブス像

三つ目の出来事「黄金時代の幕開け~コロンブスの初航海と新航路の実証~」

    1492年に起きた3つの出来事で、知らぬ人はいない最大の事件が、コロンブスの初航海の成功である。希代の冒険家であり、起業家、そして野心家だったイタリア・ジェノバ出身のコロンブス。彼は、足掛け10年以上にわたる長い資金調達ラウンドを成功させ、自身が持つ大いなる仮説「西回りでのインド到達」に向けて旅立つ。

    このコロンブスの初航海は、起業家が投資家から出資を募り、それによって航海を成功させた、最も初期の、最も成功したベンチャー投資案件だ。この成功は、しばしば株式会社の機能を効果的に説明する例としても話題に上がる。細分化された持ち分(株式)を活用して、不特定多数から資金を調達し、大きなビジネスを成し遂げるという話だ。

    しかし、株式会社が有限責任制度を伴って世界に誕生するのは、この連載の中で何度も触れている通り、1600年代初頭のオランダ東インド会社からだ。この意味において今日の概念に例えるなら、コロンブスの資金調達はコーポレートファイナンスではなく、「プロジェクトファイナンス」である。

     資金調達をめぐるコロンブスの悪戦苦闘は、現在のIT起業家のそれと瓜二つ

      この、コロンブスのスタートアッププロジェクトファイナンス。掘り下げてみてみると、実に興味深い。筆者は仕事柄、スタートアップのファイナンス支援や投資に関与させて頂くことがある。

      その視点で見ると、今から500年以上前にコロンブスが成し遂げた資金調達をめぐるドラマと、現代のスタートアップ起業家が悪戦苦闘しながらファイナンスを成功させる姿が、まさに「瓜二つ」という言葉以外形容し難いほど、よく似ているのだ。

      これは、イノベーションとディスラプト、ドラッカーの言葉を借りるなら「創造と破壊」を生みだすプロジェクトファイナンスの仕組みは、500年前から本質的には何も変わっていないということでもある。そこで、コラムの舞台をオランダに移す前に、起業家コロンブスの「スタートアップファイナンス」の詳細を整理してみよう。コーポレートファイナンス誕生前夜のコロンブスの栄光と挫折。そこにはきっと、現代に通じる重要な示唆があるはずだ。

      (この項続く)

      文:西澤 龍(イグナイトキャピタルパートナーズ 代表取締役)

      西澤 龍 (にしざわ・りゅう)

      IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社 (イグナイトキャピタルパートナーズ株式会社)代表取締役/パートナー

      投資ファンド運営会社において、不動産投資ファンド運営業務等を経て、GMDコーポレートファイナンス(現KPMG FAS)に参画。 M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、JAFCO事業投資本部にて、マネジメントバイアウト(MBO)投資業務に従事。投資案件発掘活動、買収・売却や、投資先の株式公開支援に携わる。そののち、IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS 現在IBMに統合)に参画し、事業ポートフォリオ戦略立案、ベンチャー設立支援等、コーポレートファイナンス領域を中心にプロジェクトに参画。2013年にIGNiTE設立。ファイナンシャルアドバイザリー業務に加え、自己資金によるベンチャー投資を推進。

      横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業(マクロ経済政策、国際経済論)
      公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 CMA®、日本ファイナンス学会会員

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      ignite.info@ignitepartners.jp


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