一神教と疫病とコーポレートファイナンスⅨ│間違いだらけのコーポレートガバナンス(22)

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スペイン・バルセロナのコロンブス像

二つ目の出来事「未来の喪失」~ユダヤ人追放(セカンドディアスポラ)~

    レコンキスタを完成させて、カトリック両王は自信を深める。長くキリスト教諸王国の財政を圧迫してきたイスラム勢力との戦争に、もう金はかからない。これまで見てきたように、キリスト教諸王国は、ユダヤ教徒を国王隷属民として管理・支配下に置き、徴税と称してその財産を巧みに収奪し続けてきた。しかし、もはやその利用価値は限定的になった。イベリア半島のキリスト教化を真に完成させるならば、イスラム教徒の次に放逐すべきは、ユダヤ教徒である。

    1492年3月20日、王の諮問会議で「ユダヤ人追放」が議題となる。前回のコラムで見てきたように、1347年のペストの襲来以降、スペイン各地において、キリスト教徒によるユダヤ教徒襲撃、財産の略奪と惨殺、そして強制改宗が激しさを増していた。

    そして、多くの新キリスト教徒(ユダヤ教からの改宗者)を生んだ一方、偽装改宗者は異端審問にかけ、容赦なく処刑してきた。こうした混乱を「完全に」かつ「最終的に」解決する手段として、カトリック両王はスペイン王国からのユダヤ人永久追放を決断する。(出典:同上)

    1492年3月31日、「ユダヤ人追放令」に両王が署名する。そして5月1日に両王国に公示された。その内容は、「すべてのユダヤ教徒を国外追放とし、7月31日までに(なんとたった3カ月だ!)スペイン王国領土を離れること。但し、キリスト教徒に改宗すればその限りではない。」というものだ。

    しかし、信仰を守り続けるユダヤ教徒が、追放令を機にいまさらキリスト教に改宗したところで、結局のところ異端審問の脅威に晒され続けることに変わりはない。敬虔なユダヤ教徒にとって、実質的な選択肢は「国外脱出」以外になかったといってよいだろう。

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    2021/09/25

    1347年に欧州に上陸したペストは、ほどなく南欧イベリア半島に到達する。そして欧州各地で繰り広げられた惨劇が、この地でもまた繰り返される。ユダヤ教徒は隔離されたゲットーで生活し、衛生面や食事面でユダヤ教の厳しい戒律(コーシャ)を守っていた。