数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。

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「ポストM&A成功44の鉄則 決め手は”セカンドPMI”」
(田中大貴 著 日経BP社)

「失敗といわれるM&Aをゼロにしたい」。本書執筆の動機はこの一点に集約される。実は著者自身、かつての勤務先が買収された経験を持つ。新体制のもとで振り回され、同僚も次々に会社を去り、最終的に元の会社は消滅するという苦い思いを味わった。

M&Aが行われれば、すべての社員が巻き込まれる。そして何かしらの痛みや摩擦、犠牲を伴う。買った会社と買われた会社で、M&A後にもっとうまくやれるノウハウや考え方があるのではないか…。M&Aの気鋭コンサルタントとしてのバックボーンにあるのが自身の実体験だ。

著者が本書で提唱するのが「セカンドPMI」。PMIとはM&A実行後の統合プロセスのこと。通常はM&A後のおおよそ1年間の統合活動として認識されることが多い。PMIは人間同士なら新婚生活であり、最初の1年をどう過ごすかが重要となる。これに対し、最初のPMIで積み残したこと、できなかったことを数年後に再度行うPMIを、独自に「セカンドPMI」と名づけた。

M&A後に取り組むPMIでは人事制度や経理ルール、システムなど制度や仕組みの統合に主眼が置かれ、人の感情が絡むような工場・営業拠点や子会社の再編などは積み残しになりがち。そこで出番となるのがセカンドPMI。M&Aから3年以上経過しているようなケースを想定している。例えば、統合後のビジョンの再設定。PMIをやり直したいという要望は多いという。

M&Aが企業の成長戦略を描くうえで欠かせないキーワードとなって久しい。他社の経営リソースを即座に手に入れることのできるM&Aは成長に必要な時間を圧倒的に短縮できる有効な手段だ。だが、M&Aさえ実行すれば、すべてがうまくいくわけではない。むしろ、M&A後に本当の試練が始まるといっても差し支えない。失敗しないM&Aのために何が必要となるのか。

著者は、買うことありきで無定見にM&Aを進めれば、最終工程のPMIに負担がかかるのは当然だとし、買収目的の明確化などM&Aの基本鉄則をまず示す。そのうえで、M&A後の「組織融合」「人材管理」「経営管理」「戦略実行」「再編」の各論について要点を押さえる。

著者はベイカレント・コンサルティングでM&Aコンサルティングサービス部門「M&Aストラテジー」を率いる。マッキンゼーなどを経て、2016年1月から現職。

文:M&A Online編集部