ハイブリッド型総合書店「honto(ホント)」で好評の「ブックツリー」は、本の専門家たちが私たちの“関心・興味”や“読んでなりたい気分”などに沿って、独自の切り口で自由におすすめの本を紹介する企画です。 そんな数あるブックツリーの中から、ビジネスパーソン向けのものを編集部が厳選! 教養や自己啓発、ビジネスの実践に役立つものをピックアップしてお届けします。
ブックキュレーター:コンサルタント 山口周
私は哲学科出身でありながら、外資系コンサルとして働くという珍しいキャリアを積み重ねてきました。経営学は、全て独学で身につけています。私の著書『読書を仕事につなげる技術』の中から、特にビジネスマンにおすすめの5冊を紹介します。名経営者がくぐりぬけた修羅場や悩みを読むことで、同じような場面に遭遇したときに、参考になるはずです。
小倉昌男『経営学』ではなく、『小倉昌男 経営学』という題にすべてが込められている。つまりこれはヤマト運輸の祖である小倉昌男氏が、自分で練り上げた経営学なのだ。そこから学び取れるのは、徹底的に「自分で考える」という経営態度だ。前例を破壊して新しい何かを生み出すことが求められている今の私たちには学びがある。
IBM再生を指揮したガースナーによる再生の手記。読む人によって示唆はさまざまだろうが、個人的には企業文化がどのようにつくられ、変え難いものになっていったかという点が興味深い。企業文化を変えるには、文化そのものではなく、ビジネスそのものを変えなくてはならないというシャインの主張のケーススタディとして読める。
リーダーシップというのは「言葉」がすべてで、したがって、コミュニケーションはリーダーシップの蘊奥といえるが、本書を読むとそれがよくわかる。明快な目標を立て、それを何度も繰り返し語る。以上。逆に言えば、「ここまでしなければ伝わらないのか」という点でも学びが大きい。
著者の西堀栄三郎は東芝の技術顧問をやりながら南極越冬隊の隊長をやったりと、破天荒な人生を送ったことで知られているが、そういった幅広い体験から得られた「マネジメントの極意」が本書に記されている。南極越冬という未曾有の営みを隊長として体験したことから得られた学びなどは、同じく未曾有の状況に入りつつある多くの企業人にとっても有益だ。
インテルは発展途上で大きく戦略の舵きりをした会社である。創業者が、創業時の事業を捨てる決断を迫られたときに、どのように葛藤するのか、外部者からはなかなか窺えない創業経営者としての悩みを窺い知ることができる。
ブックキュレーター:コンサルタント 山口周
1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニーなどを経て、2011年より組織開発を専門とするヘイグループに参画。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成、キャリア開発。著書に『読書を仕事につなげる技術』(KADOKAWA)、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)など。
※本記事はhonto「ブックツリー」より転載