ハイブリッド型総合書店「honto(ホント)」で好評の「ブックツリー」は、本の専門家たちが私たちの“関心・興味”や“読んでなりたい気分”などに沿って、独自の切り口で自由におすすめの本を紹介する企画です。 そんな数あるブックツリーの中から、ビジネスパーソン向けのものを編集部が厳選! 教養や自己啓発、ビジネスの実践に役立つものをピックアップしてお届けします。
ブックキュレーター:黒木亮
本は未知の世界への扉である。ページを開けば、まったく知らなかった世界が眼前に展開する。そうして少しずつ自分の世界を広げていくと、それらがやがてシンクロし、世界の全貌が見えてくる。優れた本は実際の旅以上に、旅の喜びを与えてくれる。
イギリスに住んで29年になるが、日本から来る人にはまず湖水地方の旅を勧める。青い湖を遊覧船で渡っていると、豊かな自然に抱かれている喜びがある。本書は湖水地方で600年以上続く羊飼いの家に生まれた著者の手記である。出産の春、寄生虫駆除と毛刈りの夏、競売市と品評会の秋、過酷な自然と戦う冬などが抒情的な文章で綴られている。
月刊「PLAYBOY」に連載され、一世を風靡した開高健のアマゾン釣り紀行。写真が豊富でしかもそれが美しく、眺めているだけで南米を旅している気分になる。“言葉の狩人”の異名をとった開高健の文章は、写真の説明文までもが鮮烈で、この人は本当に天性のコピーライターだったのだと思い知らされる。
エジプト、ベトナム、ロンドンに住み、世界78ヶ国を訪れた著者のエッセイ集。登場するのは、サハリン、トルコのクルド人地区、スウェーデンのラップランド、中央アジア、カナダ、サウジアラビア、エジプト、中国の新疆ウイグル自治区、武漢、ロンドン、イラン、マダガスカルなど盛りだくさん。ミル貝のしゃぶしゃぶなど、珍しい食べ物の話も。
著者が金融機関の駐在員としてベトナムのハノイに1年9ヶ月駐在したときの日記をもとに、ベトナムの発電プロジェクトを物語の核とし、疾風怒濤の時代のアジアを描いた作品。ベトナムのほか、香港、インドネシア、パキスタン、チューリヒも舞台に、一大スケールでアジアのむせ返るような匂いと通貨危機を再現した。
旅行記の古典。26歳の著者がインドのデリーからロンドンまでを乗り合いバスで行こうと、1年以上にわたってユーラシア大陸を放浪した際の紀行文。香港・マカオに始まり、マレー半島、インド、ネパール、パキスタン、中近東、地中海諸国などを経てロンドンに到着するまでが描かれる。ノンフィクション作家らしく、文章が平易で読みやすい。
ブックキュレーター:黒木亮
1957年北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務し、国内外の金融案件を手がける。2000年国際協調融資の攻防を描いた『トップ・レフト』で作家デビュー。主な作品に『巨大投資銀行』『排出権商人』『鉄のあけぼの』『法服の王国』など。大学時代は箱根駅伝に2度出場し、ランナーとしての半生を『冬の喝采』に綴っている。1988年よりロンドン在住。
※本記事はhonto「ブックツリー」より転載