ハイブリッド型総合書店「honto(ホント)」で好評の「ブックツリー」は、本の専門家たちが私たちの“関心・興味”や“読んでなりたい気分”などに沿って、独自の切り口で自由におすすめの本を紹介する企画です。 そんな数あるブックツリーの中から、ビジネスパーソン向けのものを編集部が厳選! 教養や自己啓発、ビジネスの実践に役立つものをピックアップしてお届けします。
ブックキュレーター:新将命
私が本を選び人に奨める時の基準は3つある。ひとつめは「理念(哲学)とハウツー(実践)」のバランスが取れていること、二番目は「分かり易く役に立つ」という点、そして、最も重要視しているのは、その時その時の流行や、奇をてらった極論に溺れず、1.時代、2.国籍・国境、3.業種、業界、4.企業規模を超越して、すべての会社の経営に普遍性高く当てはまる「原理原則」に基づいているということである。お奨めの5冊はこの3つの条件をクリアーしていると考えられる。
「Think out of the box」(箱の外に出て考える)という英語の表現がある。「常識の枠に捉われずに考える」という意味だ。グーグルという急成長を遂げている会社を題材として書かれた本作には、優れた人材を引き付け、一人一人の社員が持つポテンシャルを最大限に発揮させるための「箱の外」のノウハウがギッシリと詰まっている。企業活性化のための生きた教科書といえる。
本書の最大の特徴は、平易平明さにある。ガバナンスに関して書かれた本は、難解な法理論を展開しているものが多いが、この本は、「なぜ今ガバナンスなのか」という問いかけから始まり、ガバナンスの本質や活用法、限界などについて極めて分かり易く説いている。読んで「理解度と腑に落ち度」の高い好著である。
「THE WILL TO MANAGE」という原題の本書は、経営に関する私にとってのバイブルである。経営の原点にはWILL(意志)が肝要であると主張する、1966年に出版された本書は、「右手に理念、左手に実践」のバランスを見事なまでに凝縮した、優れた経営に関するビジネスマン必読の古典の一冊である。
「エクセレント・カンパニー」になるためには戦略、システム、プロセス等の「ハードエッジ」に加えて、信頼、知性、チーム、テイスト、ストリーの「ソフトエッジ」が必要である、という主張の本作。企業経営の土台には、戦略というハードエッジが必要だが、ほかにも信頼を初めとした5つのソフトエッジの両建てが肝要である、という考え方には説得性がある。時々見かける 「数字志向」の経営者に対する警鐘の書である。
自画自賛ならぬ、自書自賛になる危険をかえりみずに言えば、この書を書くに当たって私が意識したのは「分かり易く役に立つ」ということである。私の30年以上の経営者経験から学んだ、空論や虚論ではなく、実際の経営の場で役に立つ実論を体系づけて述べている。経営者、及び次代の経営者には、「これだけは押さえておきたい」という経営の原理原則を学ぶために一読をお奨めしたい。
ブックキュレーター:新将命
1936年東京生まれ。早稲田大学卒。株式会社国際ビジネスブレイン代表取締役社長。「経営のプロフェッショナル」として日本、ヨーロッパ、アメリカの企業の第一線に携わり、企業アドバイザーや経営者のメンターを務める。講演や企業研修等を通じて国内外で「リーダー人財育成」の使命に取り組んでいる。
※本記事はhonto「ブックツリー」より転載