数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識や教養として役立つ本も紹介する。

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「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」(講談社+α新書・三戸政和著)

今年4月に出版以来、増刷を重ね、年末ですでに18刷を数える。何といっても、その奇抜なタイトルにくぎ付けになるに違いない。副題は「人生100年時代の個人M&A入門」。宮仕えのサラリーマンであれば、リタイア後を見据えて、「起業」を思い描く諸兄も少なくないはずだが、本書が指南するのは「会社を買う」こと、つまり買収だ。

著者が買収対象としてすすめるのは、ポテンシャルは高いものの、経営のやり方がよくないために業績がふるわなかったり、後継者難で事業継続が困難視されたりする中小企業。自分がオーナー経営者になることは容易に想像できないが、ある程度の規模の会社で管理職を務めた人なら、15~30人程度のチームを束ねていたはず。そういう人は自分のいた業界で、従業員が同じくらいの中小企業であれば、十分にマネジメント可能だという。

サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい

中小企業をめぐっては2025年までに70歳を超える経営者は全国で245万人に上るとみられ、引退にさしかかる。しかも、この約半数が後継者未定とされ、大廃業時代が危惧される。著者はサラリーマンにとって大チャンスが到来するとし、潜在力のある中小企業を買い、あなたが経営しませんか、と提案する。

一方で、「起業はやめなさい」と言い切る。会社をつくることは誰でもできるが、事業をゼロから立ち上げて軌道に乗せるのは並大抵のことではないからだ。著者自身、日本創生投資という30億円規模の投資ファンドを運営し、中小企業の事業再生や事業承継に携わっているだけに実感が伝わる。

何よりも、中小企業を買うことのメリットは自身、勘所が分かる業界で、設備も顧客も従業員も仕入れ先も取引銀行もそのまま引き継ぐことができる点にある。もちろん、経営状態が悪く、社員の質も低く、買うべきではない会社も多く存在する。会社をいくらで購入できるのか、買いたい会社をどうやって探すのか…。ヒントやノウハウをふんだんに織り込んでいる。

組織の中で力を出しきれていないサラリーマンにとっては新しいキャリアを、定年が見えてきた人には人生100年時代の定年後の新しい資産形成法を提案する一冊。

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文:M&A Online編集部