数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「まんが図解 倒産のすべて」 帝国データバンク著 宝島社刊
有名企業が倒産に至った経緯をまとめたのが本書。信用調査会社である帝国データバンクがまとめた。タイトルに「まんが図解」と入っているが、まんがの部分は少なく、いわゆる漫画本とは趣を異にする。
「私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから」という印象的な言葉を残した山一證券を皮切りに、日本初となった更生特例法を申請した千代田生命保険、戦後最大の倒産となった協栄生命保険など17事例(そごう、マイカル、タカタ、武富士、日本振興銀行、水谷建設、ノヴァ、ハウステンボス、ヒューザー、レナウン、ヴァンヂャケット、永大産業、リッカー、三光汽船)を取り上げた。
事例ごとに倒産の教訓を三つにまとめてあり、倒産の原因は何だったのか、倒産を回避するためには何をやるべきなのかが、理解しやすくしてある。
一番目に取り上げた山一證券では「自主廃業を招いた組織的な『飛ばし』」について詳しく解説してある。
飛ばしとは、価格の下落で評価損の出た株を持つ企業が、その損を決算期に表面化させないために、証券会社の仲介で他の企業に一時的に引き取ってもらう行為をいう。
例えば3月期決算企業が損失を表面化させないために、9月期決算の企業に一時的に株を買い取ってもらう。株を買い取ってもらった企業は、9月期決算企業の決算が近づくと利息に見合う利益を上乗せして株を買い取るという仕組み。
株価が下落を続け、飛ばしを引き受ける企業がなくなると、証券会社が損失を補填することになる。山一證券の場合は飛ばしの受け皿として連結会社数社を活用しており、簿外債務が2000億円を超えていた。これが命取りとなり、破たんした。
同社では総会屋への利益供与事件で前社長が逮捕されるといった不祥事もあり、業績が悪化していたことも響いた。
山一證券のほかにも千代田生命保険では「ワンマン社長」に、協栄生命保険では「経営実態隠し」に触れ、倒産の一因となった経営者の暴走や不正に言及した。企業経営者にとっては戒めの書と言えそうだ。(2020年12月発売)
文:M&A Online編集部
2019年1月に発行した「資本コスト」入門の改定版で、新たに海外案件の場合の資本コストの取り扱いや、外国人の目に映る株主総会、M&Aが増加している背景、株主総利回り(TSR)などを追加した。