数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「ASEAN M&A時代の幕開け-中堅・中小企業の成長戦略を描く」日本M&Aセンター海外事業部編著、日本経済新聞出版

「海外?いや、うちは無理だよ。大企業じゃあるまいし」と、自らハードルを上げてしまう日本の経営者は多い。が、ASEANの企業経営者のメンタリティーは意外にも日本人そっくりという。しかも、日本同様に後継者問題に悩んでいる中小企業も少なくない。本書は劇的に成長するASEAN企業とのクロスボーダー(国境を超えた)M&Aの指南書だ。

ASEAN M&A時代の幕開け

少子高齢化や人口減、長引くデフレ経済で、中小企業といえども日本市場にしがみついていては未来がない。そこで海外へ進出を…となるのだが、資本を出さない企業提携は容易に撤退できるためリスクこそ小さいが、現地事業に踏み込めないだけに中途半端に終わる可能性も高い。

単独で現地法人を立ち上げれば踏み込んだ事業展開ができるものの、経営を軌道に乗せるまでには順調に進んでも2〜3年、難航すれば4〜5年はかかる。時間がかかることで、当初想定していたビジネスチャンスを逃すことになりかねない。

同じ資本を投入するのなら、スピードアップのためにすでに現地でビジネスを展開している企業を買収ーすなわちM&Aを検討してはどうか…というのが本書の主旨である。

実は日本でクロスボーダーM&Aが本格的に始まったのは、ほんの10年前という。対象企業の国籍は北米とアジアが多いが、近年はアジアの比率が高まってきた。とりわけASEANは6億6000万人もの人口を擁する大市場で、実質GDP成長率は3〜8%と順調に成長している。

日本から地理的に近い上に、日本企業のブランド人気も高い。「日本企業にM&Aされるなら大歓迎」という企業経営者も多いという。まさに日本の中小企業がクロスボーダーM&Aをするには、うってつけの市場なのだ。

とはいえ、ASEANは一括りにできないほど多様性に富んでいる。同書ではシンガポールやマレーシア、ベトナム、タイの国内事情や進出メリット、留意点などを解説している。実際にASEAN企業をクロスボーダーM&Aした日本企業のインタビューも掲載しており、実用的なガイドブックと言えるだろう。(2020年12月発売)

文:M&A Online編集部