数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「図解&ストーリー「資本コスト」入門 改訂版」 岡俊子 著、中央経済社 刊

「無借金経営を誇っている会社が世の中には数多くありますが、無借金会社の資本コストは実は高いということになるのでしょうか?」「日本でM&Aが増加している理由は、企業が成長するためには、もはやM&Aしか選択肢がないからなのです」 

こうした会話を3人の社外取締役が交わすことで、資本コストに関する理解を深めていくのが本書のスタイル。 

3人は4ケタの億円(数千億円)の売上高を持つ一部上場企業であるミツカネ工業(架空の企業)の社外取締役で、ゴルフと酒が好きという共通点があり会議のあとに連れ立って食事にいく仲。 

食事の際に、業績の振るわない子会社の再建計画やM&A案件の採算性、事業構成の見直しなどの議論を通じて資本コストについての知識を増やしていく。 

2019年1月に発行した「資本コスト」入門の改定版で、新たに海外案件の場合の資本コストの取り扱いや、外国人の目に映る株主総会、M&Aが増加している背景、株主総利回り(TSR)などを追加した。

資本コスト入門 改訂版

3部構成で、1部では資本コストとは何なのか、目標とする資本コストに対してどのように実績を把握すればよいのかなどについて解説。2部ではM&Aで対象企業(買収先)の価値をどのように算定するのか(バリュエーション)、いかに買収価格を検討するのか(プライシング)などについて取り上げた。 

3部では新たに社外取締役となった外国人が3人の議論に加わり、日本独特の政策保有株式や、資本コストに対する意識の低さ、事業構成の見直しなどについて議論を展開する。 

著者は30年以上M&Aに関するコンサルティングを行っており、WACC(ワック)やCAPM(キャップエム)などの専門用語を交えながら、あまり専門的な領域に踏み込まずに入門書としての内容にまとめ上げた。 

「ミツカネはコスト面には厳しいけど、時間感覚が鈍いですね」と厳しい言葉を口にしていた外国人社外取締役だが、新型コロナウイルスの影響でテレワークやウェブ会議などが普及した現状に触れ、「日本企業の対応力と順応性の高さには驚かされます」といった、にこやかな場面で締めくくっている。(2020年8月発売)

文:M&A Online編集部