数あるM&A専門書の中から、新刊を中心にM&A編集部がおすすめの1冊をピックアップ。選書の参考にしてみては? 

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「事例解説 租税弁護士が教える事業承継の法務と税務」 佐藤修二監修、木村浩之、木村道哉著 日本加除出版刊

中小企業の事業承継の場面で、「法務と税務のコラボレーション」が今ほど求められる時代はないという。高齢を迎えた多くの中小企業経営者にとって事業承継は差し迫った問題だ。

息子など身内に経営のバトンを託す「親族内承継」では相続税や贈与税がただちに絡んでくる。一方の「親族外承継」であれば、近年、第三者に会社や事業を丸ごと売却するM&Aの活用が増えつつあるが、この場合は組織再編税制などの法人税の知識が求められる。

租税弁護士が教える事業承継の法務と税務

事業承継といえば、弁護士の出番だ。ところが、法律の専門家である弁護士が必ずしも税務に明るいわけではない。かたや税務のプロである税理士も法務に通じているわけではない。本書のタイトルにある「租税弁護士」(タックス・ロイヤー)とは法務と税務の双方に精通した弁護士を指すが、こうした“二刀流”の使い手は日本では希少とされる。

事業承継の方法は承継の時期や対価の有無によって、生前贈与(契約による生前の無償譲渡)、遺贈(遺言による相続時の無償譲渡)、死因贈与(契約による相続時の無償譲渡)、売買(契約による生前の有償譲渡)の4つに大別される。第1章の総論でまず、それぞれの方法について法務上、税務上の基礎を解説する。

圧巻は第2章の各論だ。全210ページ余りの8割近くを割く。親族内承継、親族外承継のベーシックなケースから、社団法人・財団法人や信託の活用、国際承継(つまり海外M&A)の応用編まで、23の事例を取り上げた。

親族内承継では事業承継税制、遺留分、生命保険、持ち株会社、種類株、退職金、名義株など、親族外承継ではMBO(経営陣による買収)、第三者への会社・事業の売却、合併などを切り口に、円滑な経営のバトンタッチや税負担軽減の勘どころをレクチャーする。許認可事業や医療法人の事業承継にも目配せしている。

いずれの事例もいかにもありそうなリアルな設定で、自社の状況とオーバーラップする場面に出くわすに違いない。リタイアを考えるオーナー経営者に薦めたい実践的な1冊。(2020年4月発売)

文:M&A Online編集部