数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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事業承継の羅針盤」 太田久也著、サンライズパブリッシング

未上場会社の事業承継を成功に導くための指南書というのが本書の位置づけで、事業承継の成功事例と失敗事例を数多く紹介してある。 

事業承継は失敗を重ねながら学んでいくという類のものではなく、絶対に失敗できない一生に一度の最後にして最大の仕事である」との言葉から20年ほどM&Aにかかわってきた著者の強い思いを感じ取ることができる。 

ケーススタディとして、まず取り上げたのが西武グループの元オーナーである堤義明氏の事例。堤義明氏は相続税を免れるための偽装工作によって有価証券報告書虚偽記載で逮捕され、西武鉄道が上場廃止になった。 

この上場廃止によって損害を被った株主への賠償のため、堤義明氏は西武グループの全株式を売却し、堤一族が築き上げてきた西武グループのすべてを失ったという事件を紹介。このことから代々に渡って会社を引き継いでいくためには株についての正しい認識が必要であると強調する。 

そのうで、キノコ生産の「雪国まいたけ」、定食チェーン店の「大戸屋」、家具販売の「大塚家具」などの上場企業のほか、いくつもの未上場企業の失敗事例を取り上げ、一つひとつの内容を紹介しながら解説を加えた。 

いずれも相続税対策として株式を分散したり、早くから株式を譲渡することで支配権を失うことの危うさを指摘している。 

事業承継の羅針盤

「支配権」「乗っ取り防止」「少数株主権」「株主総会」「財産権」「バトンタッチ・専門家」「持株会社」「従業員持株会」「事業承継税制 他」の9章構成で、これまでの経験やノウハウをちりばめた。 

例えば持株会社では「銀行は持株会社に資金を貸し、本体会社らの配当金で返済するプランを提案するが、これはやめた方がいい」ときっぱりと言い切る。融資のため、銀行のための事業承継プランであり、会社よりも銀行の利益が優先されているという。 

さらに乗っ取り防止では「内紛は外敵に付け入る隙を与え、上場は乗っ取りと背中合わせということを肝に銘じよ」と説くほか、従業員持株会では「従業員持株会が危険というのは大嘘で、事業承継対策において極めて有効で効果的」と推奨する。(2020年11月発売)

文:M&A Online編集部