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事業再構築補助金 採択企業63社が倒産 過去には不正行為も

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事業再構築補助金の採択企業63社が倒産、倒産発生率は0.12%

公開日付:2023.02.05

 中小企業の思い切った業態転換や新事業への進出を支援する「事業再構築補助金」。中小企業庁を中心とした補助事業で1月16日には第9回公募が開始された。これまでに、延べ6万社以上が採択されている。
 東京商工リサーチ(TSR)は、独自で採択企業の倒産状況を調査した。倒産数は昨年12月末までで63社が判明した。本稿では、倒産企業の属性などを報告する。

 事業再構築補助金は、2020年4月以降の売上高が減少し、事業再構築に取り組み、事業計画を策定した中小企業が主に申請できる。「通常枠」や「大規模賃金引上枠」などが設けられ、2020年度第3次補正予算では1兆1,485億円が計上された。
 通常枠の補助額は100万~8,000万円で、補助率は中小企業が3分の2、中堅企業が2分の1だ。また、「回復・再生応援枠」では、中小企業活性化協議会などから支援を受けて再生計画等を策定している企業が対象となる。
 事業拡大につながる投資が必要で、建物改修や機械装置へ投資、外注費や広告宣伝費、研修費も対象になる。
 金融機関や支援団体、中小企業診断士などのうち、経済産業大臣が認定した「認定経営革新等支援機関」と相談しながら事業計画を策定。審査を経て交付が決定すると、12カ月、または14カ月の補助事業期間を経て、実績を報告し、補助額の確定により補助金が支払われる。
 補助事業を遂行できる体制にあるのか、財務状況なども審査項目に入っている。

採択企業の倒産発生率は0.12%

 第1回~7回まで採択された6万331社(交付決定前に事業中止・廃止・辞退含む)と、2022年12月末時点のTSR企業データベースを照合し、倒産企業を抽出した。
 採択決定の資料に本社地の記載がないため、個人事業主(個人企業)の完全照合が難しいため、法人に限定(採択企業:5万2,831社)すると、63社の倒産が確認された。倒産発生率は0.12%となる。TSRの別の調査(2020年度「倒産発生率(普通法人)」調査)によると、倒産発生率は0.20%だ。時期は違うが、事業再構築補助金の活用予定だった企業の倒産発生率は半分程度にとどまった。
 事前審査のほか、事業再構築を模索するなかでの認定支援機関などとの対話により、倒産発生率が抑えられたとみられる。
 中小企業庁によると、交付決定前の事業中止・廃止・辞退を除く交付決定後の倒産・事業停止は9社(者)だ。採択後、経営環境の悪化などで事業再構築が望めなくなり、交付決定前に補助金事業の中止などを申請する企業も一定数ある。

破産が9割超、中規模負債が目立つ

 今回の調査で判明した倒産企業63社を分析した。第1回~7回までの公募別では、第2回の24社(構成比38.0%)が最も多かった。次いで、第3回の13社(同20.6%)、第1回の11社(同17.4%)、第4回の10社(同15.8%)、第5回の3社(同4.7%)、第6回の2社(同3.1%)、第7回は確認されなかった。

 主たる事業別では、「製造業」が最多の15社(構成比23.8%)、次いで「宿泊業,飲食サービス業」が14社(同22.2%)、「建設業」の8社(同12.6%)、「卸売業,小売業」の7社(同11.1%)と続く。再構築を目指した機械の入替需要がある製造業や、コロナ禍の影響が直撃した「宿泊業,飲食サービス業」が多かった。

 原因別では、「販売不振(売上不振)」が51社(構成比80.9%)で8割超を占め、事業再構築を進める前に、受注低迷で事業継続が難しくなった企業が大半を占める。次いで、赤字累積の「既往のシワ寄せ」が5社(同7.9%)の順だった。

 形態別では、破産が58社(構成比92.0%)と9割超で、事業を続ける民事再生法は3社(4.7%)にとどまり、事業再構築の意欲はあるが再生が見込めず、消滅型の破産しか選択肢が残されていない企業が多い。

 負債額別では、最多は1億円以上5億円未満の24社(同38.0%)、5億円以上10億円未満の12社(同19.0%)と中規模負債が目立つ。また、負債10億円以上の大型倒産も6社(同9.5%)あった。一方で、小規模負債の1千万円以上5千万円未満は11社(同17.4%)、5千万円以上1億円未満が10社(同15.8%)だった。

過去には不正行為も

 中小企業庁の担当者によると、2022年3月末時点で、補助金の支払い額は約51億円、社数は284社にとどまる。補助金の事業期間は12カ月、または14カ月となっており、過去の交付決定企業への支払いはこれから本格化する見通しだ。
 「大規模賃金引上枠」などで条件に達しなかった場合、「通常枠」の補助上限との差額分の返還を求める制度があるが、「事業終了後3~5年の事業者の状態により返還を求める制度であり、まだ時期が到来しないため、現時点で該当はない」(同担当者)という。
 昨年12月28日、静岡県内の事業者が実態を伴わない経費を計上することにより、補助金を不適切に受給していたことが判明。中小企業庁は、交付決定の一部を取り消し、補助金の一部返還や加算金を請求する措置を講じた。補助金という特性上、不正行為には毅然とした対応が必要だ。

倒産した補助金採択企業(表)
東京商工リサーチ調べ ©東京商工リサーチ

 コロナ禍の長期化で財務内容が悪化している中小企業は多い。生活様式だけでなく、物価高や人手不足など経済環境も激変しているが、過剰な債務を抱え、事業再構築に踏み切れない中小企業の息切れ倒産は避けられない。

 長年に渡って課題とされてきた中小企業の事業再構築。枠組みと予算が措置され、運用するフェーズに入っている。事業計画の策定を支援する認定支援機関の力量も試されている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年2月6日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

東京商工リサーチ「データを読む」より

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