東急不動産ホールディングス(HD)が3月初め、東京・銀座の大型商業施設「東急プラザ銀座」の売却を発表した。同社は多額の特別損失を伴う構造改革を2023年3月期にめどをつけるとしてきたが、今回の東急プラザ銀座の売却は一連の事業・資産選別の総仕上げを意味するのか?
東急プラザ銀座の売却先は三井住友トラスト・パナソニックファイナンス(東京都港区)。建物は銀座の数寄屋橋交差点に面し、地上11階、地下2階で、店舗面積は2万2000平方メートル。
ガラス伝統工芸品の江戸切子をモチーフとした外観が特徴で、旧東芝銀座ビルの跡地に2016年3月にオープンした。東急グループ初の銀座進出として話題を呼んだが、コロナ禍以降、テナントの撤退が相次ぎ、苦境にあった。
売却日は4月5日。東急不動産HDは東急プラザ銀座の売却で2023年3月期決算に減損処理のために211億円を特別損失として計上する。売却金額は非公表だが、帳簿価格は1185億円。売却後も施設名はそのままで、傘下の東急不動産が運営を続ける。所有と運営を分離し、“持たない経営”に軸足を移す格好だ。
東急不動産HDで思い出されるのは生活雑貨子会社の東急ハンズ(現ハンズ)の売却だ。ホームセンター最大手、カインズ(埼玉県本庄市)への売却が完了したのはちょうど1年前の昨年3月だった。
東急ハンズは1976年に創業し、DIYを通じた新たなライフスタイルの提案を目指した。1980年代から90年代に生活雑貨ブームの牽引役になった。しかし、近年、ネット販売の台頭で苦戦していたところに新型コロナ禍が重なり、業績が悪化。コロナ前の2020年3月期の950億円だった売上高は2022年3月期に555億円まで低下し、2年連続の営業赤字に陥っていた。
東急不動産HDは2022年5月に策定した「中期経営計画2025」で、資本効率を意識した投資の推進を掲げた。資本コストを踏まえ、事業ポートフォリオを見直すというものだ。東急ハンズ、そして今回に東急プラザ銀座の売却も、その流れにある。
2018年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは資本コスト(株主の期待収益率)の把握と、これに基づく事業ポートフォリオ見直しの必要性を明示。損益計算書上は黒字であっても、資本コストを下回る事業は持続可能性を失っている状態で、回復が難しいと見込まれた段階で売却を決断することが望ましいとされた。こうしたことが東急不動産HDの背中を押したのは間違いない。
さらに今年2月、東急不動産HDは傘下の東急スポーツオアシス(東京都渋谷区。直営32店舗)がスポーツクラブ大手、ルネサンスと資本提携すると発表した。現オアシスのフィットネス運営(店舗)事業などを会社分割して同名の新会社「東急スポーツオアシス」を3月31日付で設立し、ルネサンスはこの新会社の株式40%を取得するという内容。
コロナ禍による会員減に加え、ウクライナ危機をきっかけとしたエネルギー・資源高による運営コストの上昇などで、スポーツクラブを取り巻く経営環境が厳しさを増す中、新たなパートナーとの連携が不可欠と判断した。両社の直営店舗は合計約140店舗と国内最大規模に迫り、「ルネサンス・オアシス連合」の誕生は業界再編の引き金になる可能性を秘める。
東急不動産HDは2023年3月期までに多額の減損損失を伴う構造改革にめどをつけるとして、事業・資産の選別にアクセルを踏み込んできた。来期以降はコロナ後の再成長の行方に注目が移る。
文:M&A Online編集部
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