スポーツクラブ大手のルネサンスと中堅の東急スポーツオアシスが資本提携で合意した。ルネサンスがオアシスに40%出資する。両社の直営店舗は合計約140店舗と国内最大規模となる。スポーツクラブ各社はコロナ禍による会員減に加え、ここへきての燃料費・光熱費上昇が業績回復の足かせとなっている。こうした中、「ルネサンス・オアシス連合」の誕生は業界再編の引き金になる可能性もある。
東急スポーツオアシスは1985年に東急不動産の子会社として発足した。現在、首都圏と関西に32店舗を展開する。2022年3月期の売上高は135億円で、会員数は約8万6500人。
計画によると、東急不動産がオアシスが手がけるフィットネス運営(店舗)、ホームフィットネス(家庭用フィットネス製品の開発)、スポーツ施設管理受託、デジタルヘルスデザイン(Webジム)の各事業を会社分割して同名の新会社「東急スポーツオアシス」(東京都渋谷区)を3月31日に設立する。ルネサンスはこの新会社の株式40%を同日付で取得し、持ち分法適用関連会社とする。
コロナ禍を受け、リモートワーク(在宅勤務)に代表される新たな生活様式が広がりつつある。またウクライナ危機によるエネルギー・資源高をきっかけとした運営コストの上昇などで、スポーツクラブを取り巻く事業環境は大きく変化している。こうした中で、「新たなパートナーとの連携が不可欠と判断した」(東急不動産)としている。
一方、オアシスへの資本参加を決めたルネサンスはマシンジム、スタジオ、プールを備えた総合スポーツクラブの分野で、コナミスポーツ(コナミグループ傘下)、セントラルスポーツと並ぶ業界の“御三家”。2023年3月期の売上高予想は410億円(前期比10.5%増)で、オアシスの3倍以上を誇る。
売上高は新規入会者がプラスに転じ、計画通りに推移している。ただ、足元の利益は苦しいのが実情だ。エネルギー価格の高騰で光熱費負担が想定を上回り、下押し圧力となっている。2年前の21年3月期にはコロナ禍の直撃で87億円の最終赤字に陥り、財務体質の改善が急務となっていた。
ルネサンスは昨年11月、国内投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(東京都港区)の傘下企業から第三者割当による優先株発行などで約50億円の調達を発表した(今年1月末に資金調達を完了)。その際、注目されたのが資金使途だった。
出店エリアの拡大、新規ビジネスへの挑戦にとどまらず、コロナ禍でダメージを受けたフィットネス業界の再編成を見据え、体制整備を行う方針を明らかにしたからだ。事実上の「M&A宣言」で、早速、公約を実行することになったのがオアシスへの資本参加といえる。
ルネサンスは全国107店舗を持ち、オアシスの32店舗と合わせ直営約140店舗となる。業界トップのセントラルスポーツの約180店舗には及ばないものの、ルネサンス・オアシス連合はコナミスポーツの約150店舗に迫る。コロナ以前、コナミは業界トップの直営店舗数を誇ったが、固定費負担を抑えられる店舗受託に経営の軸足を移したことから、直営店舗の閉鎖が相次いだ。
コロナ以降、スポーツクラブを舞台としたM&Aはどうか。昨年7月、大阪ガスが関西を中心に総合スポーツクラブ「コ・ス・パ」、24時間ジム「FITBASE」など62施設を展開する子会社のオージースポーツ(大阪市)を、物流大手のセンコーグループホールディングスに売却した。
2021年には、ホームセンターのジョイフル本田が傘下のスポーツクラブ3店舗(茨城県2、千葉県1)を「ゴールドジム」を運営するTHINKフィットネス(東京都江東区)に売却した。この同じ年、ルネサンスは新ジャンルのアウトドアフィットネス事業を手がけるBEACH TOWN(横浜市)を子会社化した。
古くは2014年、日本テレビホールディングスがサントリーホールディングス傘下で業界4位のティップネスを買収している。
文:M&A Online編集部
東急百貨店本店が1月31日に「最終日」を迎え、55年余りの歴史の幕を閉じる。渋谷では2020年に駅直結の東横店がすでに営業を終了。その昔、買収合戦の舞台となった日本橋店も1999年に閉店している。