ブイチューバーグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLOR<5032>と、ユーチューバーのサポート事業を手がけるUUUM<3990>の間に開きが現れてきた。今期の売上高は両社とも200億円台となるものの、営業利益は6倍ほどに開く見通し。
UUUMが当初予想通りの業績で推移しているのに対し、ANYCOLORは「にじさんじ」や英語圏のブイチューバーグループ「NIJISANJI EN」が想定を上回る業績となったのに加え、経費は予定通りに推移しているためだ。
もともと営業利益率の高かったANYCOLORが一段と差を広げた格好で、業界を代表する両社の業績で見る限り、収益力の面ではブイチューバーの方に軍配が上がりそうだ。
ANYCOLORは2022年12月に、2023年4月期の売上高を当初予想の190億-210億円から15億-35億円引き上げ、225億円(前年度比58.9%増)に、営業利益も当初予想の55億1000万-65億1000万円から11億9000万-21億9000万円引き上げ、77億円(同83.7%増)に修正した。これによって売上高の200億円大台乗せが確実となり、利益も2倍近くに伸びることになった。
一方のUUUMの2023年5月期の売上高は270億-285億円の見込みで、増収率は14.5%-20.8%と2ケタの伸びを示す見込み。営業利益も11億-13億円の予想で、伸び率はやはり2ケタアップの13.2%-33.8%と決して低くはない。
新たなユーチューバーの獲得や育成、ユーチューバーを活用したプロモーションビジネスの拡大などに取り組んだ結果で、2023年5月第2四半期時点の業績は順調に進んでいる。
それでもANYCOLORと利益で大きな差がついたのは販管費の差だ。ANYCOLORの2022年4月期の販管費率(売上高に占める販管費の割合)は12.6%で、UUUMの2022年5月期の販管費率26.0%と比べると13.4ポイントも低かった。直近の決算でもANYCOLORの2023年4月期第2四半期の販管費率はわずか7.9%で、UUUMの2023年5月期の販管費率は27.3%だった。
UUUMは専属のユーチューバーを前年同期の303人から2023年5月期には188人に絞り込み、専属ユーチューバーの生産性を上げることで利益率を高める取り組みを展開したが、それでもANYCOLORには遠く及ばなかった。
UUUMの2022年5月末時点の従業員数は576人(平均年収は537万円)、これに対しANYCOLORの2022年4月末の従業員数は230人(同516万円)で、この面だけでも20億円近い差が生じる。
ブイチューバーはバーチャル ユーチューバーの略称で、アバター(自分の分身となるキャラクター)を用いてユーチューブなどの動画サイトで情報を発信する人たちを指す。本人の顔をネットに出さなくてもユーチューバーなれるのが大きな特徴だ。
ライブコンサートなどを開催する場合でも、実際のホールなどを用意する必要がないため、コストを低く抑えることができる。業績の差は今後ますます広くことになるのだろうか。
関連記事はこちら
・【UUUM】ユーチューバーらとともに新しいビジネスの創出に挑戦
UUUMは2013年にユーチューバーの動画を利用したオンライン販売事業を手がける企業とし創業。2018年にマーケティング事業を手がけるレモネードを吸収合併したあと、2020年に吉本興業からマルチチャンネルネットワーク運営権の一部を取得。さらに同年には実験が運営するソーシャルアプリ「FOLLOW ME」事業を取得するなどM&Aに積極的。
一方、ANYCOLORは2017年に設立。翌年にブイチューバーグループ「にじさんじ」の活動を開始した。その後、中国、インドネシア、インド、韓国で、ブイチューバーグループを立ち上げ、2021年には英語圏でブイチューバーグループ「NIJISANJI EN」の活動を開始した。
年 | UUUMの沿革 |
---|---|
2013 | 東京都渋谷区でON SALEを設立 |
2013 | uuumに社名を変更。クリエイター専門のマネジメントプロダクション事業を開始 |
2014 | UUUMに社名を変更 |
2017 | 東京証券取引所マザーズに株式を上場 |
2018 | カプセルジャパンと資本、業務提携 |
2018 | チョコレイトと資本、業務委託契約を締結 |
2018 | マーケティング事業を手がけるレモネードを吸収合併 |
2018 | ガーブーと資本、業務委託契約を締結 |
2019 | ピースオブケイク(現note)と資本、業務提携 |
2020 | 吉本興業からマルチチャンネルネットワーク運営権の一部を取得 |
2020 | 実験が運営するソーシャルアプリ「FOLLOW ME」事業を取得 |
2021 | Samurai工房と資本業務提携 |
年 | ANYCOLORの沿革 |
---|---|
2017 | いちからを設立 |
2018 | ブイチューバーグループ「にじさんじ」の活動を開始 |
2018 | ゲーム配信に特化したブイチューバーグループ「にじさんじゲーマーズ」の活動を開始 |
2019 | 中国でブイチューバーグループ「VirtuaReal Project」の活動を開始 |
2019 | インドネシアでブイチューバーグループ「NIJISANJI ID」の活動を開始 |
2019 | インドでブイチューバーグループ「NIJISANJI IN」の活動を開始 |
2019 | 韓国でブイチューバーグループ「NIJISANJI KR」の活動を開始 |
2021 | インドのブイチューバーグループ「NIJISANJI IN」の活動を休止 |
2021 | ANYCOLORに社名を変更 |
2021 | 英語圏でブイチューバーグループ「NIJISANJI EN」の活動を開始 |
2022 | インドネシアの「NIJISANJI ID」と韓国の「NIJISANJI KR」を「にじさん」に統合 |
2022 | 東京証券取引所グロース市場に株式を上場 |
文:M&A Online編集部
これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。