再生の成功要件は、戦略とチェンジマネジメント

これまで、業績不振に陥っている企業に対しては、症状を特定し、その症状に応じた治療のアプローチをとることが再生を成功させる必須要件であることを述べてきた。それはある意味経営のセオリーを適用し、アート(右脳)とロジック(左脳)で導き出される再生実現のための「解=戦略」とも言える。

筋の良い「戦略」がなければ絶対に再生は成し得ないが、ただ「戦略」だけでは再生実現の必要十分条件足り得ない。両輪で必要なのがその組織に所属する役員、社員等の人心を掌握し、人、組織が一丸となって再生のための戦略を実行していくような状態を作らなければならない。いわゆるチェンジマネジメントである。

チェンジマネジメントを実現するには3つの要件がある。1つ目は事実に基づいた分析、考察を経て抽出する「業績低迷のスパイラル(因果関係)」を明示し、「これが悪い要因だったのだ」と納得(腹落ち)してもらうこと。

そして2つ目は再生実現のためのコンセプト、経営方針、戦略を明解な言葉、内容でまとめた上で説明し、「よし、やってやろう」と理解してもらうこと。そして3つ目は早期に成果を創出すること、いわゆる「Quick-win(クイックウィン)」の実現である。

もちろん、この3つを実現する上で、社員の話を「傾聴」することや、戦略を落とし込むためにただ命令をするのではなく、「ファシリテーション」により議論しながら戦略に対する理解度を深めてもらう方法など、テクニカルなスキル、技術は必要になるが、それ自体は手段であって目的ではない、ということを念頭に置いておくことが肝要だ。

これからの再生は「本業低迷企業」が増える

前回述べたように、倒産件数自体は近年減少傾向にある。しかし、企業を取り巻く環境は全くもって楽観できない。周知の通り、日本国内はこれからどんどんと人口減少が顕著になっていく。なにせ、30年後の2050年には日本の人口は1億人を割り込んでしまうのだ。内需産業は座していれば死を待つのみ、という業種や企業が多く出てくる。

また、現在アメリカと中国が貿易戦争の真っ只中にあるが、保護主義が台頭していっているグローバルのマクロ環境も相まって、今後の経営環境は不透明かつ流動的でより不確実性が増している。

そんな中、売上、利益が停滞、低迷する事業において抜本的な手を打たなければ、その後も徐々に業績を落とし、ついには赤字に転落する、といった企業が様々な業界で頻出してくるだろう。

そういった事態に直面するに際しては、技量、知見に長けた「経営のプロフェッショナル」を今から自社で育成するか、そういったタイミングになったら外部のプロフェッショナル人材を活用し、高度な問題解決を可能にする経営チームを確保しておくことだ。

事業再生はテクニックだけでは乗り切れない。高度な”経営技術”と意思決定力や忍耐力などの”人間力”を備えた”経営人材”がいなければ始まらないことを肝に命じておくべきだろう。

(文=山田政弘/ジェミニ ストラテジー グループ株式会社 代表取締役CEO)