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親会社と子会社の会計処理は合わせるべきか しっかり学ぶM&A基礎講座(28)

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海外子会社などがあった場合はどうなるのか

親会社では日本の会計基準に従っているものの、海外子会社については現地の会計基準に従っているというケースも考えられます。このような場合、連結財務諸表を作成する過程で、親子会社間で会計処理などを統一するのが原則です。

ただし、海外子会社がIFRS国際財務報告基準)や米国会計基準に従って財務諸表を作成している場合には、一部の例外を除いて、それらの財務諸表を使用して連結財務諸表を作成してよいことになっています。

一部の例外というのは(1)のれんの償却、(2)退職給付会計における数理計算上の差異、(3)研究開発費の支出時費用処理、(4)投資不動産の時価評価および固定資産の再評価などの処理方法を指します。これらの処理方法では日本基準とIFRSや米国会計基準との差異の影響が依然として大きいため、連結財務諸表を作成時における修正が求められているのです。

なお、こうした取扱は、海外子会社だけでなく、国内子会社がIFRSや米国会計基準などを採用している場合にも適用されます。

そもそも連結財務諸表に求められる精度は?

特に多数の子会社を擁する企業グループでは、連結財務諸表を精緻に作成し始めればきりがないという側面もあります。そのため、例えば、重要性の乏しい子会社はそもそも連結範囲に含めないというような判断も必要となります。また、上述した会計処理の方法だけでなく、親会社が3月決算で子会社が12月決算といった会計期間の差異も生じます。

親子会社間の決算日は合わせるのが原則ですが、重要な不一致などを調整することを条件に、親会社決算日から3か月を超えない日を仮決算日とすることが認められています。つまり、親会社の3月決算の財務諸表に子会社の前年12月決算の財務諸表を合算して連結財務諸表を作成するという実務が行われているのが現状なのです。

そういう意味では、連結財務諸表の作成において会計処理の細部にこだわりすぎるのは、ややナンセンスということもできます。有価証券報告書の利用者の意思決定に影響を与えるような情報の偏向があってはならないというのが大原則ではありますが、重要性の観点にもとづいて会計情報の作成と開示が行われているのが実務というものです。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)

北川 ワタル

経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。

学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)

出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など

北川ワタル事務所・株式会社ダーチャコンセプトのウェブサイトはこちら


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