「救済」のはずの施策が裏目に?

前線の医療部隊からの警告にもかかわらず、米軍は感染が拡大していた本国から第一次世界大戦の欧州戦線へ陸軍兵士を大量移送する。戦場で苦戦する自軍を「救済」するには、大量の兵員補充が必要だと考えたからだ。

その結果、部隊内でインフルエンザの感染が急拡大。前線ではインフルエンザで動けなくなる兵士が増え、その補充兵がさらに感染を拡大するという悪循環に陥った。1918年9月から戦争終結の11月までの2カ月間だけで、米陸軍兵士4000人が欧州へ渡る輸送船での移動中にインフルエンザ感染により戦地に赴くことなく死亡したという。

この史実から学べることは、感染者が多い場所から大量の人間を遠隔地へ移動させれば、確実に流行を拡散するという事実だ。しかも、近代以降の移動は徒歩や馬という開放空間ではなく、船舶や鉄道、バス、航空機といった密閉空間に長時間「密集」することになる。

地方の観光地は東京や大阪といった大都市圏に比べると医療体制が不十分で、重症化する高齢者の比率も高い。それでも政府はキャンペーン延期を「全く考えていない」(菅義偉官房長官)としており、予定通り7月22日から開始する方針だ。

困窮した観光業者を「救済」し、国内消費を拡大するための「Go Toキャンペーン」だが、全国に感染を拡大するようなことがあれば、観光業者のみならず日本経済に深刻なダメージをもたらす。

100年前に起こったスペイン・インフルエンザと同様の事態になるとすれば、大量の人的移動により第1波とは比べ物にならない大きな被害をもたらすだろう。事実、当時も第2波の感染拡大で最も多くの感染者と死者を出した。

企業は新たな感染拡大に備えて、体力が残っているうちにM&Aや事業売却などの「防衛策」を考えておく必要がある。意外にも第1波の流行にもかかわらず、国内のM&A件数は減少するどころか2020年上期に過去最高を記録した。

文:M&A Online編集部