「新釈 成功するM&Aの進め方」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「新釈 成功するM&Aの進め方」 坪井孝太 著、ダイヤモンド社 

M&Aが企業経営の常套手段として定着して久しい。日々、大小さまざまなM&Aが行われている。世界規模の大型M&Aはたちまち経済ニュースの主役となる。また中小企業の後継者難に伴い、M&Aを活用した第三者承継も活発化する一方だ。

本書がフォーカスするのは中規模のM&A。成約金額でいえば、数十億円から数百億円程度のいわゆる「ミドル」の案件だ。数百億円を超える案件は「ラージ」、さらに数千億円以上になると「メガ」と呼ばれる。こうした中規模以上では買い手と売り手の双方がFA(フィナンシャル・アドバイザー)を選定し、クロージング(成約)までの交渉を仕切る。

新釈 成功するM&Aの進め方

1億~20、30億円程度は「スモール」、1億円以下の小規模案件は「マイクロ」と分類される。スモール以下のM&Aでは仲介会社が買い手・売り手双方の代理人として交渉を進めるのが一般的だ。

「ミドル」クラスのM&Aの当事者は主に中堅企業か、それ以上の大企業。ラージやメガのM&Aでは買い手、売り手がいずれも巨大企業で、社内に専門のM&A担当部署を設けている例が多いが、中堅企業は必ずしもそうではなく、外部プレーヤーへの依存度が高まる。本書はこうした点を踏まえ、中規模以上のM&Aをシームレスに進め、成功に導くためのポイントを解説している。

M&Aの流れはプレディール(戦略策定、対象企業の発掘・選定など)、オンディール(基本合意から成約まで)、ポストディール(成約後の統合作業)の3段階からなる。とりわけ、中規模以上のM&Aではオンディール、ポストディールの比重が高く、いずれも工程ごとに実務の細分化・専門化が進んでいる。

オンディールの要となるのが対象企業の実態やリスクを精査して買収価格に反映させるデューデリジェンス(DD)。財務や税務をはじめ、法務、労務、ビジネス、人事、情報システムなどさまざまな領域でDDが行われる。

本書はそれぞれのDDの目的と注意すべきポイントを押さえ、買い手企業のM&A担当者のためにその心得を指南する。ガン・ジャンピング規制(国内外の競争法に抵触するおそれ)への対応にもページを割いている。また、各DDに必要な費用について取り上げており、相場観を知ることができる。

ポストディールの大半を占めるのはPMI(M&A後の統合プロセス)。PMIの成否が買収の成否を左右するといっても差し支えない重要な作業だ。誰が、いつ、どう進めるかについて、テーマごとに実践的なアドバイスを行う。何よりも、PMIの成否に大きく影響するのがリーダーの存在だという。

事例コラムとして、DD、PMIの成功例と難渋例を五つ紹介しているが、具体的かつ示唆的で参考になる。著者は国内外のM&Aサポート・コンサルティングで20年以上の経験を持つプロフェッショナル。(2022年9月発売)

文:M&A Online編集部

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