「関西スーパー争奪 ドキュメント 混迷の200日」|編集部おすすめの1冊
エイチ・ツー・オー リテイリングとオーケーが、関西スーパーを巡って繰り広げた争奪戦をまとめ上げたのが本書。日本企業が株主総会のあり方を考えるうえで、参考になる一冊といえそうだ。
数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。
M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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「リノベーション・スタートアップ 買収して『起業』する新しいビジネスのつくり方」 田中伸明著、アルク刊
今や「名門大学」と呼ばれる大学で、卒業生の人気進路は「官僚」でも「大企業」でもなく、「起業」という。官僚や大企業のサラリーマンとして社会人人生をスタートする学生の中にも「就職は起業へのステップアップにすぎない」と考えているケースも少なくない。
「起業」の魅力は「自分が本当にやりたいことができる」「官僚や大企業の従業員といった世間では高給とされる職業の生涯年収を1年で得られる」「自分の手で社会的なイノベーションを起こせる」など、「雇われ人」ではできないことばかり。野心にあふれる若者には魅力的だろう。
だが、実際の「起業」は、そう簡単にいかない。大成功を収め、世間に注目される起業家は、ほんの一握りにすぎないのだ。
「うまくいかなければ最悪、会社はつぶれ、本人も借金抱えて人生終わり-ということにもなりかねない」と、著者は警鐘を鳴らす。
厄介なことに「経営者に能力がないから」「ビジネスプランが良くなかったから」失敗するわけではないという。
たとえ「能力ある経営者」が「優れたビジネスプラン」で事業を立ち上げても、失敗するケースも多いのだ。著者によれば「時の利という幸運」次第なのである。
では「起業」は、ギャンブルなのか?実はそうでもない。著者が推奨するのは、既存の中小企業を買収して経営者になる「リノベーション(改装型)スタートアップ」だ。
「リノベーション」とは、既存の建物に大規模な改修工事を実施し、用途や機能を変更して性能を向上させ、付加価値を与える大規模改装工事のこと。
古民家を高級旅館にリノベーションし、新築の高級ホテルよりも高い宿泊料金を設定しながら、なかなか予約が取れない物件も数多くある。要は「起業」で同じことをやれば、「成功の近道」というわけだ。
著者は実際にゼロから「起業」し、株式上場(IPO)を実現。さらには本書のタイトルにもなったM&Aによる「リノベーションスタートアップ」にも成功している。「起業」の苦労話や倒産危機、M&Aの失敗などについても言及されており、「サクセスストーリー」ではない「実践の指南書」になっている。
実はM&Aについての内容は後半の3分の1ほど。3分の2は経営者のライフスタイルや資質、ゼロからのスタートアップの手法、IPOの準備といった「起業」全般についての体験談を元にした基礎知識だ。それゆえ「M&Aによるリノベーションスタートアップなんて回りくどいことはしたくない。ゼロからの出発だ!」という「ゼロイチ起業家」志望者にも参考になる1冊だ。(2022年4月発売)
文:M&A Online編集部
エイチ・ツー・オー リテイリングとオーケーが、関西スーパーを巡って繰り広げた争奪戦をまとめ上げたのが本書。日本企業が株主総会のあり方を考えるうえで、参考になる一冊といえそうだ。