数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。
M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
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「アマゾン VS ウォルマート」 鈴木敏仁著、ダイヤモンド社刊
米国の、いや世界の小売業の頂点に立つウォルマートと、その座を脅かし急成長を続けるアマゾンの「竜虎の戦い」を解説した1冊。追われているのは実店舗のウォルマート、急追するのはネット通販をはじめとする電子商取引(EC)のアマゾン。もはや命運は明らかで、旧態依然の店舗に頼るウォルマートは、新興テック勢力のアマゾンの前に敗退するだろう…というストーリーを想像しがちだが、それは「甘い」。
ウォルマートも常に「進化」を続けてきた企業だ。日本の小売業が百貨店からスーパーマーケット、そして専門店チェーンとコンビニと変遷するに従って、古い業態は衰退するのが「お約束」になっている。しかし、ウォルマートは違う。
著者はウォルマートが小売業どころか全産業に先駆けて、1970年代から先端テクノロジーの導入に積極的だった歴史を明かす。1987年には衛星通信による自前の全米通信ネットワーク網を完成し、民間で最大のデータベースを持つ企業になった。
しかし、デジタル化のスピードは加速する一方だ。さしものウォルマートも、アマゾンの後塵を拝することになる。アマゾンが全米小売業売上ベスト10に初めて入った2011年に、ウォルマートはデジタル化のギアを入れ直す。その手段はM&Aだった。
同年にウォルマートはネット上の情報をトピック別に整理する技術を開発していた米コスミックスを買収する。2012年に同社の技術を利用して、社内のソフトウェアやデータベース、サーバーなどのレガシーシステムを一つにまとめて更新する「パンゲア」プロジェクトに着手した。
アマゾンの領域であるECにも、2016年の米ジェット・コム買収で本格参入している。ジェット・コムの創業者で最高経営責任者(CEO)だったマーク・ロリー氏は、2017年にウォルマートのCEOに就任した。
アマゾンが「アマゾンフレッシュ」などで実店舗に参入するなど、小売業界の「リアル」と「バーチャル」で棲み分けていた両社の直接競合は拡大している。アマゾンは2023年には売上高でウォルマートを追い抜くとの予測もある。それが現実のものになっても、そう簡単に勝負はつきそうにない。ウォルマートのデジタル化におけるキャッチアップが加速しているからだ。
なぜ新興勢力のアマゾンに、化石のようなウォルマートが対抗できているのか?素朴な疑問に答えてくれる。内容も平易で、ポイントを絞ったムダのない内容で両社の「強み」を明らかにした。M&Aだけでなく、小売業の現状と将来を知るためにも読んでおきたい。(2022年3月発売)
文:M&A Online編集部
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武田勝頼、上杉景勝、北条氏政ら戦国武将12人が行った事業承継やブランディング、人事、生存戦略などを、SWOT分析の手法を用いて、現代のビジネスで参考になるようにまとめた。