「後継者不在、M&Aもうまくいかないときに」|編集部おすすめの1冊

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt

数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「後継者不在、M&Aもうまくいかないときに」 青山財産ネットワークス 編 日刊工業新聞社 刊

全国の65%以上の中小企業で後継者がいないと言われており、経済産業省では、このまま放置すると、2025年ごろまでに最大で650万人の雇用と22兆円のGDP(国内総生産)が失われると試算している。

こうした状況を踏まえ、国は後継者不在の中小企業を対象に事業承継がスムーズに進むよう、優遇税制や補助金制度などを設け、事業承継を後押ししている。子どもや親族などへの承継はもちろん、M&Aによる外部企業への経営権の移転などについても積極的に推奨する。

後継者不在、M&Aもうまくいかないときに

ただ、すべての企業で事業承継がうまく進むとは限らない。財務内容が悪化していたり、事業環境が厳しい状況にある企業では、子どもはもちろん、M&Aの買い手となる企業もそっぽを向いてしまうはずだ。

そんな企業に対する解決策を示しているのが本書で、「縮小型事業承継」と「幸せな廃業」という2つの試みを提案している。「100」か「0」だけではない。「30」という選択肢があるというのが「縮小型事業承継」の、廃業は決して負けではないというのが「幸せな廃業」の骨子だ。

「30」の選択肢というのは、企業の一部だけでも残すという考えで、一部の黒字事業が残ったり、長く使ってきた機械設備が引き続き使われたり、ブランド名が残るなどを指す。事業承継がうまくいかなくて完全廃業すれば「0」となるが、この方法だと長年努力して経営してきた足跡を残せるわけだ。

廃業は負けではないというのは、倒産する前に廃業を選ぶことで、取引先や金融機関などに迷惑をかけずに済み、従業員に退職金を渡し、経営者自身も再出発や老後の資金を手にすることができるというもので、廃業を経営に失敗したと捉えるのでなく、胸を張って廃業を選択肢に入れてほしいと説く。

後半部分では、事業を縮小してM&Aに成功したケース、従業員と向き合うファンドから派遣された経営者のケース、従業員を再就職させて廃業したケース、採算店舗を従業員に譲渡したケースの四つの具体的な事例を紹介している。事業承継に行き詰った経営者には大いに参考になりそうだ。(2021年10月発売)

文:M&A Online編集部

NEXT STORY

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5