「バリュエーションの理論と実務」|編集部おすすめの1冊

alt

数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

「バリュエーションの理論と実務」鈴木 一功、田中 亘 編・著 日本経済新聞出版刊

バリュエーション(企業価値評価)の現場で、自分たちに都合の良い結論を導くために、一部の実務家が背景となる理論の一部をつまみ食いしてしるのではないか。

そのことによって、企業価値評価実務の全体を通してみると、必ずしも理論的一貫性がとれていないのではないか。

さらに裁判所も理論的蓄積が乏しく、十分に理論に立ち入ることなく、形式論で判断しているのではないか。

こうした懸念を抱く法学、 経済学、金融経済学、会計学の研究者らや、実際に企業価値評価に携わる企業のM&A担当者らが「バリュエーション研究会」を立ち上げ、裁判などで争われるような論点を中心に、引用している理論の妥当性や問題点を検証した。

この研究会での議論を基に、企業価値評価の実務で争われる可能性のある論点を整理し、理論を踏まえた上で許容される範囲を示したのが本書だ。

バリューエーションの理論と実務

5部構成で、第Ⅰ部では、総論として日本のバリュエーションをめぐる問題を取り上げ、第Ⅱ部では、バリュエーションの実務の専門家から見た、実務の現状の解説と問題点をまとめた。第Ⅲ部では、会社裁判の問題点について日本と米国の実際の判例を分析した。

第Ⅳ部では企業価値評価法の一つであるDCF(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー)法を中心にしたインカム·アプローチ(将来の利益予想やキャッシュ・フロー予想に基づいて価値評価する手法)に関する理論を扱い、第V部ではインカム·アプローチ以外の手法に対する理論的考察を加えた。

大型のM&Aはもちろん、中小企業のM&Aでも企業価値評価の実務で活用できそうで、弁護士、会計士、税理士らの専門家をはじめ投資銀行やM&A仲介会社などにもお薦めだ。(2021年12月発売)

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

M&Aをもっと身近に。

これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。


NEXT STORY

米ペイパルのペイディ買収「3,000億円」は、高いのか安いのか(上)

米ペイパルのペイディ買収「3,000億円」は、高いのか安いのか(上)

2021/10/26

米ペイパルがペイディを270億米ドル(約3,000億円)で買収しました。国内スタートアップのM&Aとしてもおそらく過去最大級の規模になると思われます。この買収額が高いか安いかについて検証してみたいと思います。