数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「オーナーの視点から考える事業承継型M&Aの法務・税務戦略」小山 浩、園田 観希央編ほか、中央経済社 刊
中小企業の後継者不足が深刻化している。少子化に伴い、後を継ぐことのできる親族が減少しているのも一因で、企業の存続をあきらめざるを得ないケースが少なくないという。
会社を解散、清算すれば、従業員の雇用を守ることができず、取引先との関係が途絶えることになるため、日本経済にとってはマイナスとなる。
近年は後継者不足を解決する方法の一つとして、M&Aによる事業承継が注目されるようになってきた。ただ、中小企業の経営者にとって、M&Aは法律や税金などの仕組みが複雑なため理解しきれない面があり、M&Aに積極的ではなかった状況がある。
さらに、これまで出版された書籍は、買い手の立場で書かれたものが多く、売り手となる経営者の立場から法務、税務を一体として解説した書籍は少なかった。
そこで本書は「事業承継を検討している経営者が法務、税務の観点から最適解を発見できることを目的にした」という。
同時に事業承継型M&Aにかかわる税理士や金融機関、コンサルティング会社の担当者らにも参考になるように仕上げてある。
構成はM&Aの全体像を説明した第1部と、事業承継型M&Aの実務上の問題点を解説した第2部から成る。
第1部は「会社と従業員の未来について」「事業承継型M&Aを阻害する要因」「企業価値向上のための取り組み」などについて取り上げた。
第2部は「経営者が死亡した際の法務、税務の問題点」「企業売却後の旧経営者の関与に関する取り決め」「事業承継型M&Aの税務リスク」などについて解説した。
筆者は森・演田松本法律事務所の弁護士5人と、税理士1人の6人で、同法律事務所の2人の弁護士が編者として加わった。
所々に「column」として「M&Aマッチングサイト」「専門家の報酬」「表明保証保険」などに関する短い17の文章を配置してある。(2021年10月発売)
M&A Online編集部
大学准教授の著者が抱いた「中小企業の事業承継を研究するにあたって、規模の問題は無視できないのだろうか」という疑問が研究の出発点で、こうした疑問を解決するための研究の成果をまとめたのが本書だ。