「会社を売る力 業界再編M&A最前線」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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会社を売る力 決定版 業界再編M&A最前線 渡部 恒郎、山本 夢人、竹葉 聖ほか著 クロスメディア・パブリッシング刊

日本は今、多くのビジネスが「業界再編」の真っ只中にある。その中で生き残り、会社を伸ばすための「攻めの経営戦略としてのM&A」に迫った一冊だ。想定している読者は、自社を売ることを検討している中小企業経営者だ。筆者たちは研究者でもなければ、公認会計士や税理士、弁護士といったいわゆる「士業」でもない。国内最大手のM&A仲介業者である日本M&Aセンターの社員だ。

会社を売る力決定版

それだけにM&Aの現場で起こっている生々しい事実を伝えている。圧巻は第1章の「会社を売った日」だろう。「会社を売る必要は、どこにもないと思っていた」永冨調剤薬局の創業者である永冨茂社長がM&Aを決断するドキュメンタリーだ。

同社は大分県を地盤とする大手調剤薬局。永冨社長は著者の1人である渡部恒郎日本M&Aセンター取締役から「国内はどの業界も再編で大手4社に集約される」とのメッセージを受け、より良い地域医療をサポートするためにM&Aを検討する。

最終的に同社は、職員の全員雇用と年収の維持、社名の存続、譲渡後に社長として働けるなどの条件で、メディカルシステムネットワークの傘下に入る決断をした。

第2章では「会社を売る」意味を説き、第3章ではIT業界や物流業界、製造業、食品業界、調剤薬局、建設業界における業界再編の最新トレンドを紹介。第4章では日本企業が直面する業界再編の流れと、「売れる会社」にするために企業価値を向上するには何が必要かを解説する。

本書によると、国内中小企業400万社のうちM&Aで買い手がつく会社は4000社、上位0.1%に過ぎないという。新規上場するのと同じぐらい難しいのだ。「売れる会社」にすることは、実際にM&Aをする・しないに関係なく安定経営を続けるという意味でも重要だ。

事業を売却する気はさらさらなくても、自社の企業価値を高めるために有用な情報が詰まっている。中小企業経営者にとっては「必読の書」と言っていいだろう。(2021年11月発売)

文:M&A Online編集部

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