数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「事業承継を乗り切るための組織再編・ホールディングス活用術」 税理士法人アイユーコンサルティング 著、税務経理協会 刊
今、多くの中小企業が直面しているのが「事業承継」問題。後継者をだれにするのか、自社株式の承継は譲渡、贈与、相続のいずれで行うのか、そして経営者一族の相続税対策は…。事業承継は一世代に一回きり、やり直しの利かない経営者の最後の仕事といっても差し支えない。
では、だれが、こうした中小企業経営者の補佐として適任なのだろうか。本書によると、その答えは「顧問税理士」。会社の現状を知り、経営者の思いを最も知っているのは長年の付き合いのある顧問税理士だからこそ、最適な承継支援策を提供できるのだという。
事業承継には後継者のパターン別に、現経営者の親族による「親族内承継」、企業の役員や従業員による「企業内承継」、M&Aを活用した「第三者承継」の3つに分かれる。だが、経営者や後継者が求める承継方法、承継の内容などは会社ごとに異なり、中小企業の数だけあるといっても過言でない。
多様な事業承継ニーズにこたえるための手法としてあげるのが本書のタイトルにある「組織再編」。単なる株価対策や相続対策にとどまらず、中小企業の成長支援にも活用できるからだ。
組織再編には株式移転、株式交換、合併、会社分割などがある。例えば、株式移転は新たに持ち株会社(ホールディングス)をつくる場合に使われる。
税理士に期待される役割は株、事業、不動産、その他資産をどのように配置すべきか検討し、その最適な配置を実現するために組織再編を組み合わせ、顧問先の中小企業にフィットしたスキームを提案・構築することにある。
執筆にあたったのは税理士法人のアイユーコンサルティング。2013年に創業以来、これまで2000社以上の事業承継支援に携わった経験を持ち、具体的な事例をケーススタディを用いて解説している。
会計・税務や決算対策などの従来業務に加え、事業承継まで支援できる“オールマイティー”の税理士を目指す人にとって刺激になる一冊だ。もちろん、事業承継を考える中小企業経営者が読んでも得する内容となっている。(2021年9月発売)
文:M&A Online編集部
「事業再構築補助金制度」に必要な事業計画書を作成するのに活用できるクロスSWOT分析について解説したのが本書。説得力のある計画書の書き方を実例を交えて紹介している。