数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。
「銀行買収 米系投資ファンドによる韓国大手行の買収と再生の内幕」ウェイジャン・シャン著、金融財政事情研究会 刊
1997年7月に、タイの通貨であるバーツの対ドル相場が急落。これをきっかけに、マレーシアやインドネシア、韓国の通貨も大きく下落し、経済が大きく混乱した。このいわゆるアジア金融危機の際に、韓国第4位の銀行である韓国第一銀行(KFB)の売買に関わる交渉の一部始終を描いたのが本書だ。
買い手は米国のプライベート・エクイティー・ファンドであるTPGのアジア子会社のニューブリッジ・キャピタル。同社はどうにもならない状況に追い込まれた非上場企業を買収し、経営を立て直し、価値を高めたうえで売却することで、利益を得る企業だ。
売り手は韓国政府。KFBは韓国最大の商業銀行だった時期もあったが、規模の縮小が続いていたところにアジア金融危機が襲い掛かり、経営が破綻したため韓国政府が国有化していた。国際通貨基金(IMF)がKFBの支援に乗り出したが、IMFは支援と同時に外国投資家への譲渡を義務付けた。

韓国政府がKFBの買い手を探しているとの情報を、ニューブリッジ・キャピタルの社員である著者が入手した1998年9月から激動の物語がスタートする。
ニューブリッジ・キャピタルの共同会長であるボンダーマンは破綻銀行の取引経験があり「破綻銀行を巡る過去の取引をみると、十分な保全があって底値で買うことができれば、絶好の儲けのチャンスとなる」との考えから、KFBの買収に前向きだった。
ところが、交渉は一筋縄では進まず、ボンダーマンが「妥協のためにこの取引が私たちの役に立たないようになったのでは」と不安を抱き、一時交渉を中断する場面があった。
さらに、昼食の席で相手側に「交渉がうまくいっているとは思っておらず、(相手が)協力的でないと感じている」と語り、相手側を怒らせた場面では、交渉が脱線しかねない状況に陥った。
こうした紆余曲折を経て15カ月後の1999年12月23日にニューブリッジ・キャピタルによるKFBの買収が成立した。そして5年後の2004年12月24日に、今度はニューブリッジ・キャピタルによるKFBの売却が実現した。
ニューブリッジ・キャピタルはKFBに5年間で9億ドルを投資し、売却によって約33億ドルを受け取っており、著者は「成功した投資だった」と振り返る。
本書はこうした出来事を時間の流れとともに、当時の情景や感情などを織り込みながら紹介しており、日記のようであり小説のようでもある。通常は知ることのできない交渉の中身について、米国のプライベート・エクイティー・ファンドが、どのように考え、どのように行動するのかに触れることのできる一冊だ。(2022年1月発売)
文:M&A Online編集部
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