「日本のマネジメント・バイアウト 機能と成果の実証分析」|編集部おすすめの1冊

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本を紹介する。

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「日本のマネジメント・バイアウト 機能と成果の実証分析」川本真哉著、有斐閣刊

「MBO」で知られるマネジメント・バイアウト、日本語では「経営陣による買収」と訳される。経営者が自ら経営する会社を買収する、つまりは「経営者などの企業内部者が出資して事業を承継する」と言うことだが、上場廃止を狙った「非公開化型」や子会社が親会社から独立するために自社を買い取る「ダイベストメント型」などさまざまな手法がある。なぜ、そうした手法を選ぶのか、そして実行した後の業績はどうだったかについて研究した本だ。

日本のマネジメント・バイアウト

日本では1990年代後半から始まったMBOは、2019年までに累積で1000件近くに達し、M&Aの一つの手段として定着している。

本書の分析によると、金額ベースでは「非公開化型」が突出して多く、国内MBO市場の77.2%を占めるという。一方、金額ベースだと「ダイベストメント型」が76.9%と、「非公開化型」の15.2%を大きく上回る。

これは「非公開化型」が資本金の大きい上場企業を買い取るのに対し、「ダイベストメント型」の対象となるのは未上場企業がほとんどな上に買取総額が非公開のケースが多いことによる。

「非公開化型」MBOの背景には、2000年代以降の制度改革による上場維持コストの増加がある。とりわけ四半期決算制度が大きな負担となっているという。岸田文雄政権が検討している同制度の見直しが実現すれば、減少に転じる可能性もありそうだ。

一方、「ダイベストメント型」は親会社が子会社の売却益を得る一方、経営陣は変わらないため他社に売却するのに比べれば取引の継続性を担保できるメリットがあるという。

同書では、わが国MBOの歴史や少数株主を整理するキャッシュアウトのスキーム、MBO後の成果(業績への影響)などについてデータ分析した結果を明らかにしている。学術論文をまとめた本であり「実務的」な内容ではないが、MBOについての概念整理や構造を知る上では最適な一冊だろう。文章もわかりやすく、専門知識がなくても理解できる内容だ。(2022年1月発売)

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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2022-02-03

2022年1月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比10件増の64件となり、1月として過去10年で2020年(74件)に次ぐ2番目の高水準だった。前年1月は新型コロナウイルス感染拡大を受けた2回目の緊急事態宣言と重なり、20件の大幅減となったが、コロナ3年目の今年は好調な出足を見せた。